少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

逃亡者北谷勝馬1-2

逃亡者北谷勝馬

 

1

 

-7年前。

夕焼けに照らされた市営住宅。ランドセルを背負ったショートヘアの少女は棒切れを振り回していた。

「じゃーな、都」

「じゃーね。航平君、智樹君」

都は連れの男の子に手を振ると、「お母さんただいまー」とスライド式のドアを開け、玄関に帰ってきた。そこには黒い背広姿の男が2人立っていた。

 都は目をぱちくりさせる。

「島都ちゃんだね」男は言った。都はおずおず頷く。

「お母さんは?」

「お母さんはね。君の子育てを間違えちゃったんだ。だから君を正しく育てるためにちゃんとしたところに連れて行くんだよ」

都はじーっと玄関に無造作に置かれた母親の靴を見つめた。

「お母さん!」男たちを押しのけようとする都だが、母親の所に行かせないとばかりに肩を掴まれ、「お母さん! お母さん!」と大声で叫びながら、男たちに両腕を掴みあげられ、市営住宅の前に停車した黒いワゴン車の中に押し込まれる。半ズボンの足をバタバタさせながら「おかあさあああん」と絶叫する都。

 

レギュラーキャラ

 

「先生はお母さんじゃないよ」

英語の先生が教室で都に向かって苦笑している。

「ほえ」

小柄なショートの天真爛漫お気楽JK、島都はよだれを垂らした間抜けな口で辺りを見回す。県立高校1年6組の教室。横の席で黒髪ロングの高野瑠奈が頭を抱えていた。その後ろでゴリラみたいな少年北谷勝馬が「げへへへへ、とうとう俺は世紀末覇者拳王になったぜ」と気持ちよさそうに寝言を言っている。女性教師の眼鏡が反射し、おでこにピキピキマークが出来た。

「北斗円環斬周脚!」

「あべしいいいいい」

そんな女性教師の怒号と勝馬の悲鳴と阿鼻叫喚が教室に響き渡った。」

 

「それで居残り掃除か」

結城竜は探検部部室でため息をついた。長身でイケメンで学年の女子からは人気だが、能天気な都に気苦労が絶えない。

「全く、あの2人は。あれほど昨日のお泊り会で夜更かしするなって言ったのに」

瑠奈はコーヒーを結城に渡しながらため息をついた。黒髪ロングのおしとやか美人の瑠奈を「またお母さんの夢を見ていたの」とポニーテールのオタク少女薮原千尋が覗き込む。

「うん」瑠奈はふとカレンダーを見つめた。

「こんところはお気楽そうな感じでパフェとかくまさんの夢とか涎たらしながら見ているんだけどな」

結城が頭をポリポリした。

「都の寝顔を観察しているの?」と千尋がニヤニヤするので「秋菜が教えてくれるんだよ。一時期はうなされていたからな」と結城が唸るように言った。

「で、明日の子供会の遠足は予定通りなのか」

結城が千尋に問う。

「今のところは」千尋は言った。

「明日はお天気みたいだし、肝試しも予定通りやるみたいだよ。いやー、助かった。迷子防止のお兄さん、お姉さん、公民館の人探していたんだよねーー」

 

 翌日早朝。TX守谷駅駅前-。

「何、信号機トラブルで止まっちゃった? 電車が立ち往生。わかりました。大丈夫です。朝マックでもしながら待っているんで」

Tシャツに半ズボンの薮原千尋スマホを切った。

「やっぱりみんな巻き込まれちゃっているぽい」

千尋がため息をつくと、瑠奈は「しょうがないよ」と笑った。

「奴さんにはいいかもな。駅で人が滞留してくれるし」

結城は駅前広場に停車した選挙カーの上で演説の準備をしている政治家を見つめた。

「何度か見た顔だよね。与党の大物議員の田杉幹夫。いっつも失言して話題になっているよね」

千尋がぼーっと田杉幹夫(61)与党国会議員を見つめた。

「俺、国会議員初めて見るぜ」と勝馬が物珍しそうに見つめる。

「でも思ったより可愛くないよね。パンダよりもお給料もらっているのに」

と都が人だかりでジャンプしているので、その小柄な体躯を結城が持ち上げる。

「お前、何ナチュラルに都さんに触っているんだ」

勝馬が絶叫した。

「俺の方がデカいし、筋肉があるんだぞ」

「何デカい声出しているんだ」

結城は都を降ろすと「勝馬が持ち上げてくれるんだとよ」と都に言った。

「おおお」都が勝馬の前でにっこり笑って万歳した。

勝馬君ありがとーーー」都のかわいい笑顔を見つめる勝馬。彼女の両脇に触れようとして手がプルプル震える。勝馬は顔が真っ赤になっていた。

「やっぱり結城に持ち上げて貰ってください」

勝馬はしょぼーんとしながら言った。都は目をぱちくりさせる。

「言わんこっちゃねえ」と呆れる結城。

「ああああっ」突然都が叫んだ。

「今度は何を見つけたんだ」

結城は好奇心の赴くまま人込みをかき分ける都についていく。リュックサックを背負った茶髪のセミロングの少女の手を握った都。

「涼ちゃんだ!、涼ちゃん!」

その少女は利発そうな顔で都を見つめた。そして小柄なショートの天真爛漫笑顔を驚愕の表情で見つめる。

「み、都」

「わーーーー、覚えててくれたっ」

都は涼と呼ばれた少女の手を取ってぴょんぴょんする。

「誰?」結城が説明を求める。

「この子は高田涼ちゃん。私と同い年で私と一緒に誘拐されたねっとりとした友達なんだよ」

都の笑顔に「ねっとりした友達」にぶったまげる勝馬と「誘拐?」と素っ頓狂な声をあげる結城と千尋、そして瑠奈は目を見開いて顔を戦慄させていた。

 

-7年前。ワゴン車に乗せられた都。

 恐怖であわあわしている小学生の少女に隣に座らされていた茶髪の同い年の一人の少女がじっと前を見て言った。

「心配しないで」

高田涼は当時は都と同じショートヘアだった。じっと男たちがカーナビを操作して車を動かすのを少女は見つめていた。都はそれを見て目をぱちくりさせる。

「私は高田涼。貴方は?」

落ち着いた様子で話しかける少女。都は「島都」と口ごもる。それでいて彼女は既にその涼という少女が何か策を講じていると理解した。

 1時間走った時だった。峠の県道を走る黒いワゴン車。外はすっかり暗くなっている。その時少女は何かを袖から出して手に握り、それをグリッと回した。途端にシュパアァアアと凄まじい音がして車内に煙が充満した。涼は発煙筒のようなものを男の股間に押し当て、男が悲鳴を上げると同時にワゴン車が急ブレーキをかけて停車する。

「こっち」

都の手を涼が取って男がたまらずスライドドアを開けるのにまぎれる形で車の外に飛び出すと、ガードレールを乗り越えて、一気に林の中を駆け下りた。

「クソッ、逃がすな」

黒い背広の長身で骸骨のように痩せていた男が、2人を追いかけようとするが、直後センターラインの真ん中で停車していたワゴン車に大型トラックが急ブレーキも間に合わず激突し、慌てて黒服の男4人は回転する車から逃げ出した。この状況が2人の少女に味方した。真っ暗な森林に少女を見つけることなど、トラックや後続の車のドライバーが集まる中で、黒服の男たちには不可能だった。

 

「そういう濃い関係だったのですか」

勝馬はマックの2階席で呆然とした。

「それからこの子と2人で山の中を3日過ごしたんだけど」

高田涼は女子高生の制服姿でリュックサックを膝に置きながら「彼女只者じゃなかったよ。食べられるキノコとか山菜とかよく知っていて、山の中で3日潜伏しても全然余裕余裕していたからね」と感心したように言った。

「3日も山の中で迷っていたのかよ」結城が都に唖然とした表情で聞くと

「迷ってたっていうより、ずっと山の中に隠れていたって感じだったかな」

と都はハンバーガーをもぐもぐする。

「だってあの人たちはお母さんが家にいるのに堂々と私を誘拐したんだよ。涼ちゃんもあの人たちは警察とグルだって言っていたし」

「警察がグルって、犯人はどんな連中だよ」結城が訝し気に涼に聞くと、涼はため息をついた。

「何だっていいじゃん」

その表情が遠くなる。都は目をぱちくりさせた。都の横で瑠奈が下を向いている。

「君、都の彼氏?」涼が不意に結城に悪戯っぽく笑いかける。

「な、なんだいきなり」

結城が素っ頓狂な声で喚きながら立ち上がった。

「ははは、あせるなよー」と涼は結城の頭を叩いて立ち上がった。

「まぁ、都が君の大切な人ならさ」

涼はマックの外を見た。ロータリーで政治家の田杉が公用車に乗り込んでいく。

「都にはその事件の事を話題に振らないようにしてほしいな」

「ほえ」都がぽかんとする前で、涼は笑顔で立ち上がり、「じゃあね、都」と帰ろうとした。

「涼ちゃん。LineLine」都があわあわすると「そのうち常総高校探検部。遊びに行く!」と笑って店を出て行った。

「おいおい、あれ子供会じゃね?」

結城が外を見て素っ頓狂な声を出した。千尋スマホの着信見て「やば」と立ち上がった。

 

 7年前-。

「大丈夫。都のママなら絶対、今度はあの誘拐犯から都を守ってくれるから」

泥だらけで面構えが違う状態の都の背中を涼は押して、都に市営住宅平屋の玄関を開けるように涼は促した。都は涼を見てうるうる泣いていた。

「大丈夫。私またこの家に遊びに行くから」

涼は都の頭を撫でた。

高田涼(テイク式女の子キャラメーカーさま)


「あ」

ロータリー前の横断歩道で都は素っ頓狂な声をあげた。

「涼ちゃん、あの時から1回も会いに来てくれてない」

都がそう言ったとき、朝の駅前に少女の姿はなかった。

 

2

 

 行きのマイクロバスの中で、都は子供たちと一緒にカラオケでPSYを披露している。

「オッパ・ガンナムスタイル」

都の音頭に合わせて子供たちが騎乗ダンスを踊る。

「もう仲良くなっている」

結城が後ろの席から呆れたように言った。

「背も小さいし、完全に小学生に紛れているよね」と千尋

「み、都さんって韓国語出来たのですか」

勝馬が呆然とした声で言うと「あれ、意味わかっていないから」と瑠奈は苦笑した。

「でも記憶力は凄いから完全に耳コピしちゃうんだよ、都」

「さ、さすが」勝馬は羨望のまなざしを向ける。結城はノリノリな都を後ろの席から見つめていた。

「気になるよね。7年前に都を誘拐した謎の組織の正体」

千尋が結城の気持ちを代弁する。結城は「し、知るかよ。あいつにとっても嫌な思い出だろ」と腕組して席に座る。

「そういえば、都と高野、それと勝馬は当時都と同じクラスだったんだよな。3日も学校に都が来なくて、何か騒ぎになっていなかったか」

と結城が瑠奈と勝馬を見回した。

「高野?」

瑠奈はふっと正気に戻ったように結城を見て「あー、4年生だったしちょっと覚えてないかな」と笑った。

「瑠奈も覚えていないとすると勝馬君も覚えていないよね」

千尋勝馬を見ると、「あ、覚えていますよ。俺先生を殴った初めての日でしたからね」と勝馬がこぶしを握った。

「何やっているんだよ」

と結城が呆れたようにため息をつく。

「だって、あのセンコームカつく男だったんだよ。都さんを事あるごとに酷い事言いやがって。挙句に『都さんは頭の病気の為遠くに行きました』とか言うもんだから、もう我慢できなくなって頭突き入れてやったよ」

勝馬は吐き捨てるように言った。思い出してムカついてきたのだろう。

「ちょっと待って。って事は先生は都がどこかに連れていかれた事を知っていたって事?」

千尋

「頭の病院って」結城は頭をかいて、前の方の席でUSAを連呼している都を見つめた。

「あの能天気極楽ポワポワ娘が、何で9歳とかそこらで措置入院とかになっているんだよ。てか、病院が黒塗りのワゴン車でいきなり家から女の子を誘拐なんておかしいだろう」

「そういえば」

勝馬が前の座席の通称東条英機の頭を大川周明の位置から手遊びしながら言った。

「都さんが休んだ日、うちの母ちゃんが都さんの家に宿泊していたんだよ。俺も行こうとしたらダメって言われてよ。で、3日後に都さんは家には帰って来たんだけど、担任が変わる5年生まで学校に一回も来なくなったんだよ。まぁ、俺や瑠奈さんは都さんの家に遊びに来て、宿題を一緒にやったりしていたんだけどな。だけど一回担任が来た時、都さんのおばさんがガチギレしていてよ。俺びっくりしちまったぜ」

「へぇー。あの温厚なお母さんが」と千尋

「まぁ、クソみたいなセンコーだったからザマアって感じだったんですが」

勝馬は座席の背もたれにドカッともたれた。

 その時、前の席からトコトコと都が戻ってきた。都は結城の隣に座ると、下を向いて結城の袖をぎゅっとした。

「どうした?」

結城が都の頭をぽふぽふする。

「ここ、丁度私が4年生の時、涼ちゃんと車から脱出した場所」

都は小さく震えていた。

「マジかよ」結城は外を見た。バスは小さな峠道を走っていた。

「ここら辺の山に、私はずっと涼ちゃんと一緒だった」

都の言葉に、座席に座っていた瑠奈が口を押える。

「ど、どうした。大丈夫かー」千尋が瑠奈の背中をさすった。

「瑠奈ちん大丈夫? ドーナッツあげようか」都が瑠奈の前でリュックをごそごそする。

「ドーナッツが乗り物酔いに効くなんて聞いたことないぞ」

結城が突っ込みを入れると、瑠奈はちょっと苦し気な笑顔で「大丈夫。何でもないから」と笑った。

「無理はしないでくださいよ」勝馬がオロオロと聞く。その時バスはつくば・石岡境界線にある高台の少年自然の家に到着した。

 

夜、肝試しの時間。

「みんな。お兄さんお姉さんがトレイル沿いに立っているから、迷子にならないように進んでね」

「はーい」

子供会のボランティアの女性、内郷智子(26)に子供たちが返事をする。

「それではお願いします。子供たちの出発状況はアプリで報告するので、迷子は注意してください」

別のスタッフが高校生5人のお手伝いに確認した。

 

 1時間後--。集合場所。

「先生、勝馬君が帰ってきません」

結城がどんよりとした表情でスタッフに言った。

「どうも悪ガキに逆に脅かされて絶叫しながら山奥に転がって行ったようで」

「何で高校生が迷子に」スタッフも呆れていた。

「すいません」結城、千尋、瑠奈が頭を下げた。

 

 真っ暗な森の中で勝馬は賢者タイプになっていた。

「ここはどこだ」

周辺を懐中電灯で照らす。その時、勝馬のポケットでスマホが鳴った。都さんと表示されている。

「み、みやこしゃああああん」

勝馬は絶叫した。

勝馬君。今いる場所分かる?

 都の声がした。

「わかりましぇん。森の中です。何かぬめっとしたものが、俺の首を」

恐慌状態の勝馬に都は「それ、男の子の用意したこんにゃくだから」と言った。勝馬が目を点にする。

-落ち着いた?

都の声に「ふ、あれは子供たちにノッてあげただけですよ。フフン」と余裕気取る勝馬

-良かった。

都の安堵の声。そして彼女は本領を発揮する。

勝馬君。月はどっちに出ている?

「あっちです」勝馬は満月を指さす。

-地面は斜めになっている? それは月が出ている方が高くなっているかな?

「は、はいはいはい」

-おーけー・・・

 

都はスマホを肩に乗せながら、千尋が翳すタブレットGoogleアースを立体視させる。

「地形とかを考えれば。多分この辺り50メートル四方にいると思う」

都は液晶をタッチする。そして勝馬に「今から結城君が行ってくれるから動かないでね」と言ってスマホを切った。

 

「さすが、都さん」

暗い森の中で余裕で北斗神拳のまねごとを始める勝馬。そんな勝馬の背後から、何かがゆっくり近づいてきていた。それは勝馬の背中にしがみついた。

「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ」

勝馬の絶叫が響くと、森の中にライトの光がいくつも浮かび上がった。

「助けて…」

真っ青になって硬直する勝馬の背後で黒髪ショートの少女がガタガタ震えていた。

「あの人たち、悪い人です。助けて…」

少女は声を震わせていった。勝馬のぶったまげた顔が少女を凝視した。

 

勝馬―――」

勝馬君―――」

都と結城は夜の森の中をひたすら歩いて行った。都はスマホ画面を見て「ここらへんなんだけど」と訝し気にスマホ画面を見つめる。

「なんだ。人の声がするな」結城がライトを向けたとき、そこにはサングラスをかけた男。長身で骸骨のように痩せた男が立っていた。背広姿だった。

「だ、誰だお前」

森の中で遭遇した不気味な男に、結城は思わず大声で誰何する。

「お前、佐久間の関係者か」

不気味なサングラスの男が無表情で都と結城に近づいてくる。都は顔面蒼白になった。この長身で痩せた男に彼女は見覚えがあった。7年前に彼女の家の玄関にいた黒服の男。7年の時を経て、恐ろしい記憶の人物に、都は遭遇してしまった。

「お前たち、佐久間を匿っているのではないだろうな」

サングラスの男が不気味なほど無表情のまま、抑揚なく結城に聞く。

「誰ですか、佐久間って。俺は少年自然の家のボランティアで迷子になったアホを探しているんですよ」

「じゃぁ、何でどこにも佐久間がいない」

と黒メガネは結城に聞いた。「あいつは足をケガしていて、遠くには行けないはずだ。だがなぜか周囲を探しても見つける事が出来ない。お前らが匿っているのだろう」

男はいきなり結城の前でスタンガンを取り出すとバチバチ放電して見せる。同じ黒服の眼鏡がさらに3人、結城の前に現れた。

(な、何なんだこいつら)

結城はゾッとした。そして呆然と立っている都を一瞬ちらっと見ると、いきなり彼女を抱えて走り出した。

「クソッたれ」

結城は羽根のように軽い都を小脇に抱えると、「都、頭を抱えろ。ぶつけるかもしれない」と喚きながら全力疾走して、森や原っぱを抜ける。

 

「都、大丈夫かな」

瑠奈がスマホ画面見ながら道路で千尋や内郷ともう1人の子供会男性スタッフと待っていると、結城が「おおおおい」と喚きながら都をわきに抱え枝木を纏いながら、さっき入っていった場所からちょっとずれた場所から道路に飛び出した。

「結城君、どうしたの?」

瑠奈がびっくりして駆け寄る。それを森の木の間からじっとサングラスの痩せた男が見ているのを後ろ向きにわきに抱えられた都が見たが、黒いサングラスはそのまま闇に消えた。

「大丈夫、結城君」

都は結城の脇から抜け出すと、道路のアスファルトに両足をつけ、危なっかしくよろけるのを瑠奈が支えた。

「あの人たち、さすがに合計6人いる私たち大人に手は出さないみたい」

都は緊張の中ではぁはぁ言いながら今自分たちが駆けてきた森の方を見た。

「え、何を言っているの? それに勝馬君は?」

千尋がぽかんと都を見るが、都はその質問に答えないまま考え込んでしまった。

「もしかしたらあの人たちにさらわれたとも考えられるけど。佐久間って人が足をケガして動けないのに見つからなかったとしたら、勝馬君が背負って逃げたのかも」

「な、何の話?」瑠奈が不安そうに聞くと、結城は珍しく肩で息をしながら「森の中にやべぇ奴らがいたんだ。黒メガネでスタンガンを持って」と瑠奈を見る。

都はスマホを片手に「とにかく」と110しようとして、コールボタンを指にあてがい、しばらく思案した。

-警察もグルだから。

そう言っている7年前の涼の顔が浮かんだからだ。だが都は意を決して110をコールした。

 

3-4に続く