少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

死者の蒼白【5-6】解答編

 
5

 

 夕暮れの団地の階段で肩を掴まれた波田直人。振り返ると「波田君」と都がにっこり笑っていた。
「島。どうしたんだ」と波田が怪訝な顔をすると都は笑って、「河川敷で発生した殺人事件の犯人が分かったんだよ」と言った。
「犯人が…そんなに早く?」
波田が呆気に取られているが、目の前の少女探偵はさらに衝撃発言をした。
「その犯人はここに連れてきているから」
都は唖然とする波田の前で団地の階段の踊り場が肌に見えるように体をずらした。そこには制服姿の阿部京子が立っていた。
「お願いします」
京子が階段のさらに下に向かって話す。するとTシャツにズボンのおっさんが階段を上がってきた。背後には結城と長川警部も立っている。
「‥‥」
波田直人はぽかーーーーんと男性を見ていたが、「誰だ」と都に聞いた。
「河川敷の近くに住んでいるその辺のおじちゃんだよ」
都は答えた。
返り血を浴びて堤防をうろついていた男性の似顔絵を目撃者に書かせて、周辺を当たったらすぐに特定できたよ」
長川が説明する。
「こ、この人が殺人犯なのか」
波田が声を震わせると、都は「ノンノン」と指を振って「この人こそが存在しない殺人事件を作り上げちゃった。それも意図せずに…そういう意味での犯人だよ」と笑った。
「説明は本人からしてもらった方がいいよね」
都はおじさんの方を見た。おじさんはため息交じりに団地の階段で喋りだす。
昨日は送別会で会社の同僚と思わず昼間から飲みすぎちまってな。そのまま河川敷の小屋まで言った記憶はあるんだ。気が付いたらこぼれた赤いペンキの上で寝ちまってよ。目が覚めたら3時くらいで。子供たちが逃げていく声がして、床を見たら赤いペンキがこぼれていた。俺の事を死体と勘違いして逃げ出したことはすぐにわかったよ。でも警察呼ばれて人の小屋で寝ていた事がバレるとヤバいって思って、そのまま外に出て必死で逃げたんだ」
その時シャツが赤いペンキまみれだった状態で通行人に目撃されたって訳か」と結城。おっさんは「ああ」と呟いた。
「そう、この事件はその辺のおじさんがややこしい事をしちゃったせいで、みんなが存在しない殺人事件を認識してしまった事件だったんだよ
都は笑顔で笑った。
「子供たちが死体を見つけたという通報、河川敷で血だらけの男性が血相を変えて逃げていたという通報、そしてその直後に火事になった河川敷の作業小屋。この3つの情報を見れば、誰だって殺人事件が存在したと思っちゃうよね」
「だが俺は放火なんてしていないぞ」とおっさんが焦ったように言うが、都は「ひょっとして小屋の中にペットボトルを置いていかなかった?」と笑顔で聞いた。
「あ、そういえば…水を入れたボトルを忘れていったような」
「まさか」
長川はここまで聞いてピンと来たようだった。
「子供たちが光を放つペットボトルを目撃したって聞いて、ピンと来たんだよ」都は笑った。
ひょっとしたらそのボトルの光が日の光をレンズみたいに集めて、葉っぱや竹ぼうきに引火したんじゃないかって。つまり作業小屋が燃えていたのは放火ではなく、偶然が重なった事故だったんだよ。つまり、波田君が私に見せてくれたあの滝つぼの心霊写真。あれと同じ錯覚を私たちもしちゃっていた。小屋の中の死体、血だらけで走る男、作業小屋が燃えている。その3つを並べると小屋の中で子供たちに死体を発見された殺人犯が死体を隠し、証拠を隠すために小屋に放火して返り血が付いたまま逃げたように見えるって事だよ」
「そして警察がそれを公表した結果、刑務所に行くことで自分や家族を守ろうとする追い詰められた連中が、次々架空の殺人犯になりきって自首してきた」
結城はため息をついた。「結果的に世にも奇妙な殺人事件になっちまったんだ」
「じゃぁ、あの3人の人は」
阿部京子が都に聞くと、長川は代わりに答えた。
「曽我部正明は『同僚の西本が社長を殺したというからこっちも会社に確認の為に乗り込んだら、榎本謹二が社員に暴行を加えている真っ最中で、そのまま現行犯で逮捕してやった』って話したら、すぐに自供を翻して自分は殺人なんかやっていないって言ったよ。よっぽど社長が怖かったんだろうな。皆口広江は行方不明になっていた息子が慌てて警察署に駆け込んできて、母は人を殺していない。自分は殺されていないってペコペコ頭を下げてきた。案の定、息子を危ない社長から逃がすために母親が天の助けとばかりに事件を利用したそうだ。西本理名はちょっと厄介だった。何せ自分が本当に人を殺していると思い込んでいた。だが逮捕されて榎本社長が怖い刑事に詰められて泣きながら聴取を受けているのを鏡越しに見せてやったら、全てを認識したよ」
「悪い奴じゃねえよ」その辺のおっさんがぶっきらぼうに言った。
「3人とも。世の中には自分の不幸を人のせいにして人を傷つける奴は大勢いるがな、3人とも他人を傷つけたり罪を犯したいわけじゃない。例え刑務所の方が今よりずっとマシでもな。3人とも罪は犯したくなかったんだ。だから今回の事を天の采配だと思い込んだんだろうな。悪い事せずに刑務所に行くための」
おっさんはそこでため息をついた。「あー、何でこんなことに」
「あんたも災難だったな」長川警部は手を振った。
「小屋の所有者によるとどのみち取り壊す予定だったらしく。特に告訴も賠償請求もしないそうだ。あの3人も厳重注意で帰してやるさ。とりあえず今からあんたにはあんたを目撃した女の子に面通しをしてもらう。これで死体の正体があんただと分かれば証拠になるだろう」
「じゃぁ、妹を連れてきますよ」
波田直人はそう言ってドアに消えた。だがすぐに出てきた。少し狼狽している。
「いや、お袋に聞いたらさ。何かキャンプの先生が迎えに来たらしいんだ。荒木っていう先生が」
波田の言葉に長川は「おかしいな。佑衣子さんは今日はキャンプに行かないって聞いていたんだがな」と首をかしげる
波田は「いや、荒木先生がどうしてもまとめ役として必要だから今からでも来てほしいって、連れて行ったらしいんです。お袋が嬉しそうにそう話していました」とため息をついた。
「ちょっとそれって」
阿部京子が声を震わせる。都の顔もさっと青ざめた。
「長川警部‼」都は長川を見上げた。
「すぐにそのキャンプ場に連れてって」都の目は真剣だった。「私の推理が正しければ、佑衣子ちゃんが危ない!」
 
 長川の乗る黒いセダンがパトランプを付けながら疾走する。
「そんな‼ 危ないってどういうことだよ」後部座席で波田直人が叫ぶ。
「もう一つの謎が分かったんだよ」長川警部の横の助手席で、都はじっと国道を走る物流トラックのケツを見つめる。
「なぜ、佑衣子ちゃんだけが宇宙人に誘拐されアブダクションされたのか。そしてその後でどうして超常現象にハマったのか。京子ちゃんに相談した体に何かが埋め込まれている話、それは何だったのか」
都は道路灯のオレンジの光が流れていくのを見つめる。
「今回の事件と同じだよ。西本理名さんが自分が社長を殺していなければいけなかったのと同じように、佑衣子ちゃんもあの日自分が宇宙人に攫われていなければいけなかったんだよ。だから佑衣子ちゃんは必死で超常現象が実在するという根拠を探していたんだよ。幽霊でもUMAでも何でもいい。それがあるって事は宇宙人によるアブダクションもあるって事だよね」
「話が見えてこないぞ」と結城が波田直人とぎゅうぎゅうしながら呻く。
「京子ちゃん」
都は助手席から後ろ斜めに座っている京子を見つめた。京子の目が見開かれる。
「京子ちゃんは大体わかっているんじゃないかな」
 
 山奥にあるキャンプ場。その簡易コテージの前に荒木廉太郎の車が停車していた。
「あそこに皆がいるからさ。先に行っててくれるかい」
荒木に言われて車を降りた波田佑衣子はコテージのドアを開けた。簡易コテージの部屋の電気をつけるが、そこにあったものを見て、佑衣子は恐怖した。
 1つのベッドと手錠、それによくわからない器具があった。それが電球に照らされて不気味に光っている。佑衣子はそれを見て後ずさりする。だがすぐに後ろから強い力で抱きしめられた。
 眼鏡を反射させて醜悪に笑う荒木廉太郎の顔があった。
「大丈夫。これは勉強なんだ。誰かに恋をする前に終わらせておいた方がいい勉強なんだよ」
荒木の手が佑衣子のTシャツの胸にあてがわれた。佑衣子は目を見開いたまま声も出せなかった。
「今度はもっとゆっくり時間をかけてみようね」荒木の声が佑衣子の耳に入ってくる。
 
「私さ…親の上司に中学の時襲われた事があるんだよね」
京子は言った。
「だから佑衣子の痛みの相談されて…何が起こったのか、大体わかったんだ」
後部座席で隣に座る京子が前髪を隠して声を震わせているのを見て波田直人の目が見開かれた。
 
6
 
「まさかそれって…」
波田直人が声を震わせた。京子は涙で震える声で「ごめん」と言った。
「言えなかった。だってあの子が作った逃げるための空想を壊す権利なんて…私にはないと思った。だからあの子の空想に合わせるしかなかった…それがこんな事になって…ごめん…」
「大丈夫だよ。京子ちゃん」
都は助手席から振り返ってにっこり笑った。
「佑衣子ちゃんは、大丈夫だから」
 
「まずはどれくらい胸が大きくなったのかチェックしないと」
佑衣子に抱き着いたまま荒木廉太郎はコテージの中で言った。
「君の事は、初めて見たときからいいなって思っていたんだ。健康的で男の子に混じって遊ぶような元気いっぱいの女の子…それでいて服の上から分かるそこはかとない胸の膨らみ…いいって思ったんだ…すごくいいって」
気持ち悪い息遣いとともに話す荒木議員。佑衣子は顔を硬直させたまま目から涙をぽろぽろ出していた。
「大丈夫。きっと忘れられない思い出にしてあげるから。きっと佑衣子ちゃんの将来に役に立つよ」
荒木の息遣いがさらに高ぶったその時だった。荒木の右手がひねり上げられ、それを助けようとして彼は佑衣子の体から倒れた。床に倒れ込む寸前で高野瑠奈が佑衣子を抱きしめた。
「この腐れ外道が」勝馬はベッドに荒木を抑え込み、荒木は「ぎゃぁあああああっ」と悲鳴を上げた。
「佑衣子ちゃん、佑衣子ちゃん」
真っ青になって硬直する佑衣子を瑠奈は必死で揺すった。
「宇宙人」佑衣子は呟いた。
「宇宙人がまた私に生体実験をしてきた。これはアブダクションだよ。アブダクションの存在が証明されたんだよ」
へたり込んだ佑衣子があわあわ話すのを瑠奈はぎゅっと抱きしめた
「佑衣子ちゃん。もう大丈夫。もう大丈夫だから。あの時怖かった佑衣子ちゃんの気持ちを、閉じ込めていた場所から出してあげよ」
佑衣子の目が見開かれた。
「佑衣子ちゃんには味方がいっぱいいるから。みんなが佑衣子ちゃんを守ってくれるから」
佑衣子は瑠奈を抱きしめ返すと、その嗚咽が大きくなり、そして堰を切ったかのように少女は号泣した。勝馬はそれをじっと見つめた。
 
「俺は悪くない!」
所轄の警官に手錠をかけられ、叫びながらキャンプ場を連行される荒木廉太郎。
「違う。あの子が、あの子が私に抱き着いてきたんだぁあ」
と叫ぶ醜態を見て、それを見守っていた阿部京子が「この外道」と殴りかかろうとしたが、「ひいいい」と悲鳴を上げる荒木の前で、都はその手を渾身の力で止めた。そして京子を見上げて、その真っ赤に顔を染めている京子をじっと見つめて、怒りを受け止めるように彼女が下を向いて拳を降ろすのを待った。
「荒木さん」
都は連行される荒木議員に鋭い声で言った。
「貴方はこれからいろんなものを失います。だけどそれは佑衣子ちゃんから奪ったもの、これから一生あの子を苦しめるものと、全然釣り合うものじゃないから」
荒木は何も言わずに呆然としたままパトカーに乗せられた。
 
「しかしよく高野さんと勝馬君このキャンプ場にいたなぁ」
長川警部はコテージに戻ってきた都の前で、瑠奈と勝馬に言った。
「いえ。都にインタビューをお願いされた時に、あの男の妙な点に気が付いたんです」
瑠奈は苦笑しながら言った。
「あの男、佑衣子ちゃんの体のどこが生体実験されていたのかを知っていたんです。佑衣子ちゃん本人はお兄さんにも言えずに京子にだけ話していた。荒木議員に話す訳ないじゃないですか。都はこの男が佑衣子ちゃんに何かをやっているとその時感づいたようです。
「なるほど。それで都は勝馬君と高野さんを予めキャンプ場に送っていたわけか
長川が感心したように言うのを、都は目をぱちくりさせながら「違うよ」と言った。長川が「おや」という顔をすると都は言った。
「ここに来てくれたのは瑠奈ちんの判断だよ。瑠奈ちんがあの男は次のキャンプでも絶対やるって言って、このキャンプ場で荒木を待ち構えていた。おかげで佑衣子ちゃんを助けられたよ」
都は瑠奈ちんの頭を背伸びして撫でようとする。瑠奈は勝馬を指さして「連れて来てくれたのは勝馬君だけどね」と言って勝馬をデレデレさせる。
「今佑衣子ちゃんは」
都はふとコテージをキョロキョロしつつ長川警部に聞いた。長川は頭をかきながら呻く。
「兄ちゃんがついて、ビジターセンターにいるよ。こっちとしては記憶が新しいうちに話しを聞きたいんだが。まぁ、あの子を苦しめる事はこっちもわかっちゃいるんだが」
「話を聞く必要はないと思うよ」
都はコテージの棚のタオルの下に隠されたものを見つめて言った。
「これって」瑠奈が一緒に覗き込む。結城がその後ろから驚愕の声をあげた。
「これ人感センサー。ひょっとしてあの河川敷の事件の時にあったブツか」
 
 キャンプ場の管理人室で、啓介と平太はテーブルにカメラを置かれて下を向いた。
「これを荒木の部屋に置いたのは、君らだね」
と長川は言った。2人は頷いた。
千尋ちゃんにLINEで聞いたよ」都が優しい声で言った。
「最新鋭のニューモデルなんだって。2人でお小遣いを全部つぎ込んで買ったんじゃないかな。お父さんに貰ったなんて話も嘘だよね」
都の言葉に2人の少年は下を向いて頷く。
「これをわざわざ買ったって事は、君らも」
長川の言葉に、啓介が喋り出した。
「この前のUFOが出たキャンプで、夜の水場で荒木先生が佑衣子に引っ付いているのが見えたんだ。その時は暗くてよく見えなかったけど、次の朝に佑衣子がアブダクションされたって言ったとき、俺何があるのか大体わかったんだ」
啓介の声が震えた。
「でも何も出来なかった。荒木先生が怖いし、佑衣子にどう聞けばいいのかわからなかった。女の子にどう聞けばいいかなんて。あいつの気持ちを考えたら…」
「だからこいつで荒木の悪事を暴くために、敢えてこのキャンプには参加したって訳か」と結城。
「でも、また佑衣子が同じことになって」平太が声を震わせる。
「今度も、俺ら佑衣子を守れなかった」啓介は下を向いて呻くように言った。
「そんなことないよ」瑠奈が2人の顔をしゃがんで覗き込みながら言った。2人が真っ赤な顔を上げる。瑠奈は笑顔で言った。
「大人って、知らない変質者の対応は教えるんだけど、親とか先生とかが酷い事をしてきた時にどうすればいいか全然教えてくれない。実際は見知らぬ変質者よりも、親や先生が加害者になるケースが多いのに。ましてご両親にも大勢の大人に慕われている地元の偉い政治家がこういう事をした時、どうすればいいかなんて、子供にわかるわけないよ。ううん、私たちだってそう。でも君たちはやれる限りの事をやった。佑衣子ちゃんの事を思って、一生懸命あの子を守ろうとした」
瑠奈は真っ直ぐ2人の少年を見つめた。
「佑衣子ちゃんの心の傷は、一生残ると思う。でも君たちが佑衣子ちゃんのためにやった事は、何かを格好良く解決した事よりも、一緒にもがいて、出来る事を頑張った事は、佑衣子ちゃんを苦しめる心の傷をきっと大きく緩和すると思う」
そして瑠奈は目じりに涙を浮かべた笑顔で少年に言いつつ、2人の頭に手をやった。
「ありがとう」
2人の少年は瑠奈の言葉の前にボロボロと涙を流しながらしゃくりあげた。それを長川と都、結城、勝馬は黙って見つめた。
 
「ええっ。瑠奈ちん原付の免許を取ったの?」
お昼の瑠奈の家のガレージで、都が素っ頓狂な声をあげると、瑠奈が「うん」と免許を見せた。
勝馬君のお母さんに教えてもらって、安くていいものを中古で買ったんだ」瑠奈は車庫にある黒いライブDIОのZXを都と千尋、結城、勝馬、秋菜に見せた。
「クラスの女子の子と今度ツーリングに行くんだ」
楽しそうな瑠奈の顔に都は「いーなー、いーなー」と目を輝かせる。
「これで探検部でバイクに乗れないのは私だけか。私も免許取ってバイクに乗ろうかな」
その都の発言に全員がじーっと微妙な視線を都に送る。都は目を白くして「シェー」の姿勢で「ど、どうしたんですか。その反応」と焦った。
「では是非お友達のツーリングまでに俺様のデコプロデュースを」という勝馬に瑠奈は「あ、そういうのいいから」と笑顔で言って、都と勝馬は仲良くしょんぼり土いじりしていた。
「そういえば今日ニュースでやっていたんだが」縁側に座る探検部のメンバーに結城が言った。
「あの荒木って議員、他にも余罪がいろいろ出てきて、被害者は10人いたらしい。親に訴えた子もいたんだが、まさか議員がそんなことをするなんてって親も信じなかったようだ。長川警部曰く恐らくかなり長い実刑になるだろうってよ」
「私からも報告ーーー」と千尋は言った。
「阿部にも聞いたんだけど、佑衣子ちゃんだいぶ元気になってきて、あの悪ガキと仲良くいろいろ冒険に出かけているってさ」
その時バイクがけたたましい音を立てて家の前に停止した。
「大変だー」
波田直人がバイクから降りてきて、フラフラこっちに走ってくる。
「お前ら。妹がまた本当に心霊写真を取っちまった」
波田の言葉に全員が「な、なんだってぇえええええ」とリアクションしてから、結城はジト目になって「今度はどんな写真だよ」と波田に言うと波田はLINEに画像をアップした。全員がスマホを見る。
「誰もいない廃墟状態の旧家の窓ガラスに、不気味な骸骨の亡霊が映り込んでいるんだ。何でもその家は悪徳一家が住んでいたらしいが、最近急に失踪したらしくて誰もいないはずなんだ。それなのに二階から人が覗いていてそれが骸骨みたいな顔なんだ。絶対幽霊だし見間違いもないだろ」
波田は口泡飛ばして喚いた。
「悪徳一家って何の悪徳だよ」
結城はため息をついてスマホの立派な旧家の2階部分を拡大させた。そして「あ」と声を出した。瑠奈も千尋も「あ」と画面を見つめている。
 都はじーっとスマホ画面を見つめていたが、すぐにスマホの登録者からある人を見つけ出して呼び出した。「あ、もしもし長川警部?」
「警部って、警察を呼んでいるのか」
波田が唖然とする。
「ああ」結城は波田の両肩を掴んで深くため息をついて言った。
「お前の妹たちが撮影しちまったのは岩本承平。都の宿敵の殺人鬼なんだよ!」
 
おわり