少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

夕闇の密室事件5-6【解答編】


5

 


「ありがとうございました」
高野瑠奈はタクシーを降りる際に運転手の大橋に礼を言った。
「いいんだ。ホテルからの送迎で、性暴力を受けたばかりの女性を乗せることはある。だからワンストップを知らせることにしている。クリニックに繋げてくれるし、経口のピルの処方箋も。悪かったね。スマホの話勝手に聞いて」
温厚そうな眼鏡の運転手はそう言った。
「いえ、本当に助かりました」瑠奈が頭を下げた。
「待っていようか?」
「いえ、説得に時間がかかると思います。改めて呼ぶ方がこちらも余裕ができます」
「了解」
大橋はそう言って車を出した。
「貴方の名前は忘れません」
瑠奈はそう言いながらタクシーを見送った。一軒家の表札には「後藤」と書かれていた。


 コンビニ前。パンとかを補充する島都。そのまま後藤店長の様子を伺う。レジで客がいない時を見計らって「ブス、お前みたいな中年ババアが雇われているのはそれなりの理由があるに決まっているだろうが」と小声でネチネチ言った。
「わかったら、家に帰れ。掃除をするんだよ。あ、もし娘が被害訴えたらお前らどうやって生きていくんだろうな。俺の家から速攻で出ていく事になるんだからな」
呆然とする岩田桐子。そしてそのまま脱け殻のようにコンビニを出てくる。
「島さん」
後藤店長は能面を張り付けたような笑顔で笑った。
「上がりの時間になれば、イベントマナー講習受けてくれるよね」
「はーい」都は笑顔で手を上げた。後藤店長は思った。
(そんな天真爛漫な君が恐怖して痛がるのを見るのが楽しみだ。ウヒッ)
「と、そんな目でお前を見ていたぞ。どういうつもりだ」
結城は漫画を見ながら都に小声で話しかけた。
「コンビニ業種なんてお前の一番苦手なバイトだろ」
「でへへ、大丈夫だよ。レジのお釣りは自動だし、店長さんが優しく教えてくれるし」
都は元気いっぱいだ。
「大丈夫なんだろうな」
「大丈夫だよ。さあ、立ち読みはご遠慮下さい」
都に店を笑顔で追放される結城。コンビニを振り替える。
(あの店長かなりヤバイ噂があったからな。コンビニで見た限りいつも都を見張っているし。あいつ面接の時に母親のこととかやたら聞いてきやがったし、となると都にとっても状況はかなり危ないな、動機も完璧だし)

その時結城に警察官は「高校生がコンビニでたむろするな」と言ってきたので、結城は「ちっ」と言いながらコンビニに背を向けた。

(コンビニのスタッフルームにはカメラが設置してある。状況的に犯行時に誰かが入ってくる要素はないから、おのずと被疑者は特定されるって事か)

結城は貧乏ゆすりをしながらコンビニの方を見た。

(俺に都を救えるのか。もし今日のせいで都の人生が滅茶苦茶になったら)

パトカーが停車するコンビニ。結城は腕時計を見つめた。(都がバイトで拘束されてから2時間か)夕闇のコンビニに結城は立っていた。

(やるしかねぇ)

 

「こんな密室トリックどうやって解けばいいんだよ」

板倉がスマホゲーム片手に頭を抱える。毬栗が「都さんに解いてもらうしか。あ、都さんはバイト先で。ウァアアアアアア、、ドフフアアアアン」と野々村泣きをする。

 

コンビニ前隣のバーガー店でコンビニを監視しながら結城がジュースをチューする。マイルドヤンキーだのファスト風土だの経済学者はウダウダ言っているが、ロードサイドのコンビニは平常だった。そして近くのゴミ箱から失敬した競馬新聞を広げ、イヤホンを耳につけた。

後藤店長の声が聞こえる。「じゃぁ、勤務時間外で悪いけど、居残ってくれるかな」と言って、都が「はーい」と言っている。

 競馬新聞の上から北谷勝馬のデカイ顔が覗いていた。結城と目が合うと勝馬の顔がびっくり箱みたいになった。

「ダアああああああ、結城」

勝馬がすっとんきょうな声を上げた。結城はジト目で「面倒くさい奴が来やがった」という視線を送った。

「何でお前がここにいるんだ。さてはあそこでバイトしている都さんをストーカーしていたな」

「お前こそ都を何監視しようとしているんだよ」

と結城。

「俺はたまたま通りすがりをしただけだ」

勝馬が怪しい日本語でキョドる。

 バーガー店の前のドライブスルーを車が通り抜ける。リアシートの子供が二人の怖いお兄さんの顔に号泣する。あわてて二人が変顔で子供をあやすが、号泣しながら子供は車と流れていった。二人は仲良く都のストーカーをしていた。「お前、少しは落ち着けよ」

と結城は何やら手でコンビニを呪っている勝馬を見た。

「何でバイト終わりに店長と二人きりになるんだ? やっぱりあの店長、都さんを襲うつもりなんじゃねぇだろうな」

結城は答えなかったが、心の中では(そうなんだよ。だから監視しているんだ)と言いながら、コーラを吸い付くしたあともストローを吸い続け、カップの中で氷がポップコーンみたく回る。

(だぁあああ、集中だ集中)

結城はイヤホンに集中した。音声が聞こえてくる。

-ああそうだ。コーヒーを淹れたんだ。島さん飲むかね。

-ええ、店長さんありがとうございます!

(都に薬でも盛るつもりなのか)結城は唸った。

(まぁいい)競馬新聞広げながら結城はイヤホンに集中する。

(都の事だ。これくらい予想はしているだろう。恐らく飲むふりをするか。奴の目を盗んでこっそりカップを入れ替えるか。いずれにせよ。女子高生探偵島都が相手の言いなりになってごくごくするはずがねえ)

-いただきまーす。ごくごくごく。

(!!!!!)

結城の肺活量がカップの中の氷をランドリーする。

-店長さん。ありがとうございました。あれ、このコーヒーちょっと大人の味がしますね。

都の怪訝な声。だがそこで呂律が回らなくなってきていた。

-あれ、店長さん?

(おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい)

結城が競馬新聞の中で目を見開いて呆然とする。イヤホンからカチャンと音がした。

 

 コンビニのスタッフルームで都はぼーっと前を見ながら、椅子に座り込んでいる。

「大丈夫だよ。痛い事なんかしないから」

後藤は虚ろな目の都を見つめた。

「本当に小さくてかわいくて、笑顔が素敵な女の子だ。こんな天使みたいな女の子が来てくれるなんて。神様は本当に芸術をわかっている。この芸術があるから、こんな奴隷みたいなコンビニオーナー契約が出来るんだ」

後藤はニタニタ笑いながら都を見つめた。

「本社の人間に言われたんだ。アルバイトでも何でもいいから結婚して、養子を取って、共同で連帯保証をしてくれる存在を多く作れって。俺の事を種馬みたいに言うんだ」

後藤は引きつった顔で都を見つめた。

「でも俺は種馬にはならない。コンビニのハーレムを作るんだ。JCやJKが、俺の性奴隷として傅く、そんな天国を実現できないなら、コンビニ経営者なんてやってらんねぇだろ」

と後藤は恍惚とした表情で天井を見た。その時だった。突然スマホが鳴る。

「あん」後藤はスマホに出ると「堀井。一体どうしたんだ」

-2つヤバい話がある。攫ってくるはずだった愛ちゃんに護衛がいたんだ。伊藤から情報を得て下校のタイミングは把握していたんだが。男子学生のガキがガードしていやがったんだ。それともう一つ。俺のタクシーに配車指令が来て、お前の家から女の子が3人、産婦人科に行く予定なんだ。

「ち、友達にチクったか」と後藤店長は舌打ちした。

「大丈夫だ。あいつは14歳。SEX自体は既成事実だから警察は動かない。友達だってあいつの家の事情を知れば黙っているしかなくなる。まぁクリーニングに行く事を怖がらせればいいだろう。お前みたいなヒヒジジイから厭らしい女だなと言われたり、クリニックに出入りしている様子を個人情報付きでネットにアップすれば、ああいう女の友情なんてすぐに崩れ去る。俺は女の生態なんて女以上に知っているからな。本当はパコパコしたくて仕方ないのにキララ系女子だと思われたくて仕方がない、愚かな動物だよ。支配するなんて簡単さ。きっと小春だって、本当はされるのを好きでやっているんだ。俺は親の為とか悲しい理由を提供してやっているに過ぎない」

後藤はにちゃーっと笑って電話を切った。

「キヒヒヒ、さぁ都ちゃんはどんな厭らしい秘密を持っているのかな」

 

ブランコに座り込み、頭を抱えている中年女性が目にはいる。佐久間はゆっくり女性に近づいていった。千尋は黙ってそれを見つめた。そしてスマホを見つめる。そして文字を打ち込んだ。そんな千尋のベンチの後ろをタクシーが通りすぎていった。そのタクシーの中に高野瑠奈はいた。彼女はタクシーの中で千尋からメッセージを受け取った。

「うばー((( ;゚Д゚)))((( ;゚Д゚)))北京原人だぞ((( ;゚Д゚)))((( ;゚Д゚)))((( ;゚Д゚)))((( ;゚Д゚)))((( ;゚Д゚)))-

「-追伸、佐久間直君からの情報。ワンストップセンターに助けを求めて。http//----」

「何これ」

高野瑠奈はぷっと吹き出した。その目には涙が浮かんでいた。そして瑠奈は制服の胸を抑えて呼吸を整える。

「瑠奈さん」と秋菜がリアシートの隣で瑠奈を見た。

「大丈夫、きっと大丈夫」瑠奈はそう言った。秋菜の横で小春は瑠奈を見た。

 タクシーは目的地に着いた。

「ありがとうございました」

瑠奈がお金を渡そうとすると、タクシーの運転手はにやりと笑った。

「嫌らしい女の子だな」

ヘラヘラ笑う運転手。

「ここ、最近有名だよ。女子中学生や女子高生がいっぱい来ているって。みんなやりまくっているんだね。どうだい、タクシーただにしてあげるから、おじさんに胸を揉ませてよ」

ケタケタ笑うヒヒ顔の運転手。瑠奈はニッコリ笑った。

「今の発言、全て録音させていただきました。後でタクシー会社に送らせて貰いますね」

運転手の堀井正(65)はタクシーを発車させると「クソガキ、許さんぞ、思い知らせてやる」と言いながら1ブロック先の角でタクシーを停車させた。

 

6

 

「もう15分だぜ」

勝馬は貧乏ゆすりをしていた。結城はイヤホンから聞こえてくる店長の外道な発言に真っ青になっていた。

「うるせぇよ。都は店長からイベントのアルバイトの話を聞いているだけだ」

結城が競馬新聞片手にイヤホンで店長の大笑いを聞きながらゆっくりと言った。。

「お前馬にはまっていたのかよ」

勝馬。「ギャンブルなんていいことないぞ」

「うるせぇよ」

結城は勝馬にわめく。勝馬は「ヘイヘイ」とコンビニを見た。

 結城は都の言葉を思い出していた。都は結城の回想の中で結城に言った。

「探検部の部室で愛ちゃんから相談されてから私は女の子が助けを求めそうなクリニックに話しを聞いたら、10代の女の子ばかり絡んでくる変態タクシー運転手がいて、そいつどうも愛ちゃんの事を知っているっぽい。こいつが誰なのかを抑える事が出来れば、例え女の子がシャワーを浴びたとしても14歳でレイプの証拠がなくても、店長自身が脅迫の証拠を消しても、そのタクシーの運転手は絶対に脅迫やポルノの証拠は消していない。私がスタッフルームに仕掛けたカメラはそいつを抑える証拠にするためのものだよ」

「本当に電話してくるのか?」

「間違いなくしてくる」都は言った。「だって愛ちゃんは結城をもってこのコンビニバイトから逃げたんだから」

(まさか都、伊藤が堀井って運転手と後藤店長と繋がっていた事を知っていたのか)

結城はバーガー店の席で都の鋭さに驚嘆していた。

「たっはっはー(^∇^)」と勝馬が間抜けな妄想で大喜びして顔をテーブルに打ち込む、直後に結城の頭突きが勝馬の頭に炸裂し、勝馬は静かになった。

 結城はバーガー店を出るとコンビニに入り込んだ。

「いらっしゃいませ」と金髪のかわいい女の子の店員がレジで結城に挨拶する。

「今すぐ家に帰れ」

結城はその店員に言った。「え」金髪の女性店員は驚嘆した。

「わかるな…あの中で何が行われているのか」目を見開く少女スタッフに結城は呟く。

「ごめんなさい…」

「良い」結城は言った。「あんたも辛かったな」

そして結城はコンビニのスタッフルームのドアを蹴破る。眠っている都のブラウスが脱がされ、シャツが丸見えになっていた。

「誰だお前」

いきなり後藤店長は傍にあった金属バットを手に殴りかかってきたが、結城の敵ではなく、思いっきり顔面に入れられた店長はそのまま仰向けにぶっ飛んだ。金属バットが床に転がる。

「都、都、おい、都」結城が大声で喚いた。

そこに入ってきたのは北谷勝馬である。彼がぽけーっと部屋を眺めるとスタッフルームの長椅子で、島都が制服のブラウスを開いてシャツ姿で倒れていた。

「このケダモノ野郎がああああ」

勝馬が噴火するが、結城は「馬鹿野郎、あれを見ろ」

と顎でスタッフルームの床をしゃくった。

 店長の後藤が顔面を血まみれにして仰向けに倒れていた。そばには金属バットが落っこちていた。

「し、死んでる」

勝馬が絶叫した。

「いや死んでねえよ」結城は勝馬に手を振ったが、勝馬は真っ白な顔になって聞いていなかった。

彼は椅子に倒れている都を見つめた。都はシャツを赤茶けた液体で染め上げ、眼を閉じていた。

「あ、あ、そんな…そんな」

勝馬は都の前に崩れ落ちた。

「都さあああああああ」

絶叫する勝馬の背後で後藤店長が起き上がり、殺意を込めた顔で金属バットを振り上げたが、結城が裏拳でブチのけし、空中で一回転してうつぶせに転がる後藤店長。

それに気づかないまま爆睡する都に勝馬は(゜ρ゜)な表情をしていた。

 テーブルには倒れたマグカップ。コーヒーが溢れていた。

「ひょっとして睡眠薬か」

勝馬は呆然とした。

「ちょいまち、それじゃあまさか」

勝馬の頭の中で野獣の眼光で都を見つめる後藤店長の姿、コーヒーに白い粉をザーしてから「コーヒーしかないけど、いいかな」とスタッフルームで都に出す後藤店長。都が眠ったところで、狼人間になり、赤ずきんちゃん相手にくじらっくすふじこぶあ。

 勝馬の思考はそこで飛んだ。結城は「大体当たっている」と呆然としながら言った。

「まあ、もう警察には通報したよ」

結城はため息をついてうつ伏せに倒れている後藤店長を一瞥した。

「ちょい待て」

勝馬が結城を見つめた。

「コンビニって監視カメラあるよな。このスタッフルームに怪しい奴が出入りしてたりはしないか?」

「怪しい奴?」

結城は頭をかきかきしながら、仕掛けておいたカメラを取り出した「いや、カメラはチェックしたが俺ら以外誰も出入りしていないな」と答えた。

「何のんびりしているんだよ。つまりこれは完璧な密室殺人じゃないか」

「だから死んでねえよ」と結城が突っ込みを入れた。

 

「どいてください。このピルを届けないといけないんです」

秋菜はクリニックの前でヒヒジジイと対峙していった。「駄目だよ」肩をどんと突き飛ばして妨害するヒヒジジイ。

「君たちの個人情報とブラのカップとオナニーの経験を教えてよ。そうすれば行かせてあげるからさ。君たち厭らしい女の子だからここにきているんでしょう」

とヒヒジジイ堀井は笑う。秋菜は深呼吸した。

「私にはね、いっぱい尊敬できる先輩がいる。推理が得意でどんな謎も解決する先輩、誰かに寄り添うのがうまくていつもみんなを安心させてくれる先輩。あと…腐っている先輩」

「ぶへくし」300メートル離れた場所を走る千尋が大きくくしゃみをした。

 秋菜は怒りのオーラを放ちながらヒヒジジイにクリニックの前で宣告した。

「それから、もう一人先輩がいる。保護監食らったときにアドバイスしてくれそうな、不良な先輩がね!」

秋菜の顔面足刀蹴りが堀井の顔面に炸裂し、堀井は入口のガラスと一緒にぶっ飛ばされた。その音をトイレで泣いていた誰かに寄り添うのがうまい先輩高野瑠奈はびっくりして顔を上げた。

瑠奈は思わず立ち上がってトイレから走り出すと「なんだ」と緊張した表情でクリニックから顔を出す玉岡を他所に割れたすりガラスのクリニックのドアに近づいた。

ドアごと蹴り飛ばされ、ガラスが散乱するロビーのフローリングの上に、ヒヒジジイのタクシー運転手が倒れ込み、体を痙攣させていた。額から血が噴き出している。壊れたドアを通り抜けた秋菜は自分が足刀蹴りでぶちのめしたせいで痙攣するジジイを他所に、玉岡に無言でピルが入った袋を渡した。圧倒された玉岡は無言でそれを受け取る。

「こいつ、小春がどんなことされたとかあそこはどうなっているとか、話さないと中に入れないって言ってきました」

秋菜は瑠奈の前で抑揚のない声で言う。そしてそのまま瑠奈に倒れかかり、子供のように号泣した。

 

コンビニのスタッフルームで都はぼーっと前を見ていた。婦人警察官2名が「貴方を逮捕します」と言って、後藤店長の手に手錠がかかる。

 結城がその様子を物凄い形相で見つめ、勝馬は呆然とそれを見つめる。頭から布を被せられた状態で容疑者となった店長がパトカーに押し込められていくのを見送る結城と勝馬

「本当にこれで良かったのかよ」

勝馬は唸った。

「ああ」結城は言った。

「俺らがここで嘘を言っても彼女を助けることはできん。不都合な嘘を隠したんじゃ意味がないんだ」

結城はそう言うとスマホを手にした。そして唖然とした。

「お前頭爆発モードでLINEしたろ。どう見ても文面的に都が逮捕された的な事に。あーあー、板倉とか完全に勘違いしているぜ」

結城はスマホを改めて打ち込みながら、横のパイプ椅子に座る都を見つめる。

 

「え、ええ、逮捕された?」

都を師匠と呼び慕う13歳の結城秋菜はスマホに向かって叫んだ。

「師匠」

彼女の声が震える。秋菜が混乱していた時だった。秋菜がいるクリニックの裏口の扉が開かれた。息を切らして駆けつけた瑠奈が声を上げた。

「秋菜ちゃん!」

瑠奈が秋菜に向かって叫んだ。

「後藤店長、逮捕されたって」

その報告にその場にいた高校生連中は歓声を上げた。

 

「もうすぐ救急車が来ますからね」と婦警が都に毛布を掛けている。

「長川警部がこれからクリニックで堀井を確保し、伊藤も逮捕するそうだ。しかしお前は馬鹿か」

結城は都に喚いた。

「何で本当に睡眠薬入りのコーヒー飲む必要があるんだ」

「だって、絶対逃がす訳にはいかなかったんだもん」

都はぬぼーっとした口調で言った。

「レイプされた後シャワーを浴びない方がいいって言われているけど、それが出来ない子もいっぱいいる。だから絶対に逃がしたくなかったんだよ」

都は酔っぱらったみたいな言い方で結城に絡んだ。

「わかったわかった」

もたれかかる都に結城は喚いた。

「マスター、コーヒーお代わりいい」喚く都。

「飲むな!」結城は突っ込んだ。

 

 夕闇の公園の時計が7時を示していた。

 

おわり