少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

殺戮湖畔殺人事件❶

 

 

 

1

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ももいろね式メーカー様 iroiroメーカー様
高野瑠奈、結城秋菜、薮原千尋

 

 

 

「ふええええ、結城君まだぁああ?」

「さすがに、この登りはしんどい」

と小柄な女子高生島都、セミロングの女子高生薮原千尋がハーフパンツ姿でばてている。

「結城君おんぶ」

「するか!」イケメン長身な男子高校生結城竜が喚いた。

「ほらみんな頑張って?」

高野瑠奈が湖畔を指さした。

「目的地の少年自然の家はすぐ近くだよ」

「おおお」

湖畔キャンプ場の向こうにある少年自然の家を見て、都は瞳を輝かせる。

 

九傑湖湖畔少年自然の家-。その立派な建物の前で都は両手を広げた。

「すごい。こんないいところに一泊700円で泊まれるの?」

「それが少年自然の家のいいところだ」

結城は声を上げた。

「団体様が専用だけどな。ちゃんと責任者を決めて計画表を出せば誰でも基本的には利用が出来る。最もホテルと違っていろいろ制限は厳しいけれどな。感謝しろよ。計画表をでっち上げた高野に」

「どうもありがとうございました」

千尋と都が小学生みたいなお礼を言う。

「で、でっち上げって」

「そういえばさっきから姿が見えない人がいるような」

瑠奈が正面の転回場をきょろきょろ見回すと、正門あたりでぶっ倒れているでっかい図体とそれを蹴っ飛ばして「ほら頑張れ」とおさげの少女が蹴っ飛ばしているのが見えた。

「あ、いた」と瑠奈。

 

「いやぁー、まさか駅から歩いてるとは、高校生は元気だねー」

野球帽をかぶった初老の職員小沢智弘(58)は感心したように言った。

「今日はお世話になります。私がチームリーダーの高野瑠奈です」

「副チームリーダーの結城竜です。あのソファーでぶっ倒れている3人を団扇で仰いでいる彼女が中学2年生で、あとは全員高校生です。少年自然の家はこれまでも何度か利用しているので、ホテルなどとの趣旨の違いは理解しているつもりです」

「まぁそう気張らないで。今日は小学生の聖歌隊のグループだけだから。これが予定表。リネン室にシーツを取りに来る事は今から出来るけど、食事と風呂の時間はここに書いてあるから。それとこれからリーダーさんには会議に出席してもらいたいんだけど」

「じゃぁ荷物を部屋に運び込んだら、すぐ降りていきますね」と瑠奈は笑顔で言った。

聖歌隊ね…。おい、荷物」

結城がソファーでぶっ倒れている3人に言った。

「部屋の鍵貰ったぞ。ただしベッドに寝っ転がるのはリネン室でシーツを貰ってからだ」

「じゃぁ、私貰ってくるから。お兄ちゃんは荷物を部屋に運んでおいて」

と秋菜は結城から敷地図を奪った。

「ほら、荷物! 立て。あと少しだぞ」

結城はとぼとぼ歩いて階段を上がる都と千尋勝馬の後ろから声をかける。3人がそのまま女子部屋に入る。ドアが閉まって、何かを殴る音が聞こえたかと思うと、瑠奈が北谷勝馬の首根っこ掴んでぶら下げながらドアの外にいた結城竜に笑顔で言った。

勝馬君を起こさないで上げて、結城君。死ぬほど疲れているから」

「お、おう」と結城。

秋菜はリネン室に向かうと、「いらっしゃい」

若い女性が手招きした。

常総高校探検部。何か12話アニメに出てきそうなチーム名ね」

と悪戯っぽく笑う女性、飯田由利(22)にリネン一式を渡されながら

「大したことはやりませんよ。カレー作ったり湖を散策したり。私の林間学校がコロナでダメになっちゃったからって、お兄ちゃんの友達が企画してくれたんです」

「いい先輩たちね、もう一方にも見習ってほしいくらい」と飯田は笑顔で言った。

「?え」秋菜が怪訝な顔をするので「ううん、何でもない」と飯田は手を振った。

「あら、あなたは高校生のチームかしら」

とどぎつい化粧の花柄ワンピースのおばちゃんが笑顔で秋菜を見る。

「私は中学生ですけど」

「ねぇ、あなた。神様に興味ってないかしら」

とおばちゃん、古市淑子(47)が口元を広げる。

「すいません。ここで宗教の勧誘はやめていただけますか」と飯田由利が鋭い声を上げる。

「あら、何で? この子には教えに触れる権利があるのに」

「あ、私たち新聞は虚構新聞って決めているので」と秋菜。

「何よ。嫌な子ねぇ」

古市は口元を歪めるとリネンを受け取り、「教団にいたらちゃんとした教育をしてあげられるのに」と言って踵を返して歩いて行った。

「ごめんね」

と由利はため息をついて秋菜に言った。

「あ、大丈夫です。近づかないようにしますから」

「まぁあなたたちなら大丈夫だと思うけど、もし不快な事されたら遠慮なく私に言ってね」

と飯田は秋菜に念を押した。

 

「どふ」

ベッドに倒れ込んでいる千尋の顔面にリネンを置きながら秋菜は「千尋先輩、師匠! 寝るのはシーツ敷いてからです」と言った。

「ありがとね。秋菜ちゃん」

と瑠奈。都も「ありがとー」と寝ながらお礼を言う。

「あ、気を付けてくださいよ。一緒に泊まる聖歌隊。かなり面倒くさそうな人たちです」

と会合に出る準備をする瑠奈に秋菜は言った。

「早速私宗教の勧誘されました。まー、スタッフさんが注意してくれましたけど」

「秋菜ちゃん大丈夫? 洗脳とかされてないよね」

都がおろおろ心配している。

「師匠じゃないから大丈夫です!」秋菜は言った。

「確かに都だったら、興味深々で誘われるままホイホイついっていっちゃうかも」

と瑠奈。

「じゃぁ、そんな人たちが金輪際近づいてこない方法が一つあるよ」

千尋が枕を顔から押しのけながら言った。

 

 会議室―。突然ドアが開き、手と手をつなぎ合った結城と勝馬が一番前の目立つ席に座った。部屋にいたさっき秋菜が会ったおばちゃんと牧師風の眼鏡の男。そして神経質そうな眼鏡の男がいる。

「な、なんだか、み、み、み、みんな俺たちを見ているななななな」

と結城がぞわぞわしたような声を出す。

 勝馬は「うおげぇえええ」しそうになるのを飲み込んでちらっと秋菜を見ると、秋菜の目がじーっと勝馬を見てこう言っていた。

―師匠が勧誘されていいの、師匠がレストランでいきなり変態調理具の宣伝し始めたり、ハルマゲドンとか言い出してもいいの?

勝馬は決心するしかなかった。

「き、き、き、気にすることはななないぜ…お、俺たちのじょ、じょ、情熱の愛を見せつけて…やらないか…」

会議場がどよめいた。

「ちょっとすいません」

と突然司祭風の男が立ち上がった。

「私は教会司祭をしております。小柳です。君たちはひょっとして同性愛者なのですか」

―よ、余計に食いついて来たぞ。

と結城は千尋に目で合図したが、千尋は腐った笑顔でスマホで録画していた。

―ゴルァああああ。

「少し宗教の話をしてもいいですか」と司祭。

―クルヌァアアア

 その時、ドアが開いて「皆さん、お揃いですか」と施設長の小沢が言った。その後ろで職員の飯田がじっと司祭の小柳慶喜(36)を見つめる。

「今からブリーフィングを行います。まずはお互いのグループの自己紹介をお願いしたいのですが」

「あ、私たちは高校探検部のチームです。この施設には野外活動と自然観察、体験学習の為に来ました」

と瑠奈。

(ナイスだ高野。高校名を隠したのはいい判断だ)と結城。

すると相手側で立ち上がったのは挙動不審の神経質そうな眼鏡の男性だった。

「私たちはもみの木教会水戸支部の者です。私は今回の合宿の企画の責任者の石橋と申します」

石橋祐輔(35)は額に汗をかきながら説明した。

「今日は聖歌隊の練習のための合宿に」

「君は神聖な信徒の活動をどうして自信をもって雄弁に説明できないのかね」

と小柳は怒りだした。

「君の娘は神に命を差し出してまで信仰を守ったというのに。失礼しました」

髭の司祭は全員を振り返ってにっこりと笑った。

「私たちは神の言いつけを守って自分を高めようとする団体です。決して怖くないので仲良くしてくださいね」

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ぷちばいおれんすメーカー様、あの子メーカー様、巨漢親父メーカー様、黄色い男様

(石橋秀子、古市淑子、小柳慶喜、石橋祐輔)

 

50分後-。

「出来るか! どこに仲良くできる要素があるんだよ」

と結城は憮然と湖畔のトレイルを調理道具の入った段ボールを両手に抱えて歩き出した。

「ホント! あんな偉そうで最低なおっさんがよく教祖なんて出来るよね」

と秋菜。

「てか薮原。こいつとホモごっこしていればあいつらはよって来ないって、寄ってきてるじゃねえか」

と結城が激怒するのを薮原千尋は「あれ、オカシイな」ととぼけて見せる。

「こういうのって、自分たちが世界を救うって意識が強いから、間違った趣味を持っている人をむやみに救いたくなるんじゃないかな」

と瑠奈が冷静な考察をする。

「いいかな」と薪を担ぐ勝馬の前で案内をしてくれている飯田由利が言った。

「同性愛は決して趣味じゃないよ」

「あ、わかっています」

結城は頭をかきながら言った。

「指で指し示す方の指向ですよね」薮原千尋は指鉄砲を作って見せる。

「あ、知ってたんだ。この施設LGBTの団体の方々も使うんだけど。あの人たちそれがまるで分ってなくてさ。前もそのあたりでLGBT団体と口論になって、LGBTの人たちに物凄い不快な嫌がらせをしたりしたの」と飯田はため息をつく。

「どんな」と結城に言われ、飯田は答える。

「『ホモの体がどうなっているのか』って当事者のお風呂を覗いたりとか」

「出禁でいいですよ」と瑠奈がきっぱり言う。

「小沢所長もそう思ったみたいなんだけど、なんか行政の方に圧力がかかったみたいで」

「やれやれ」

飯田の説明に結城はため息をつく。

「本当に、あんな人殺しもう二度と来ないでほしい」

と飯田が一瞬ゾッとする冷たい声で言ったのを秋菜は見た。

「人殺し?」

「あ、ごめん。ちょっといい間違い」

と飯田は手をふる。

「もっと楽しい話をしよう。山は紅葉で色づいているし、それが湖畔に映り込んで。私この景色が大好きなんだ」

と飯田が笑顔を見せたとき、

「ひょっとしてジェイソンも好きなの」

と都が覆面をつけて斧を持って立っている大男を見つめて目をぱちくりさせた。

「何!」と結城が大声を上げた。

 

2

 

突如目の前に現れた覆面のジェイソンみたいな怪人の前に、

「誰だテメェは」

勝馬が大声でわめき、秋菜が空手の型を作る。

「あ、驚かせてごめんね」と飯田由利が笑顔で言った。

「この人はこの施設で働いている車崎誠太郎さん。みんなの飯盒炊飯の為に薪割をしてくれていたの」

覆面の男性はぺこりと頭を下げる。

「ごめんなさい、ジェイソンって言っちゃって」

都がぺこりと頭を下げる。

「いえ、普段は覆面をつけたりはしていないので」

車崎が覆面を取ると、そこには目が草食動物みたいに左右に離れ、口が突き出た人物が現れた。

「トリーチャー症候群ですよね」

と瑠奈が言った。

「よく知っていらっしゃいますね」車崎誠太郎(31)は少し驚いたように言った。

「中学の時のクラスの子が同じ症候群でしたから」と瑠奈。

「本当に薪割ありがとうございました」と都。

「いえ、何かありましたらいつでもよんでください」

車崎は一礼すると少年自然の家に戻っていった。

「あの人は紳士だったな」

勝馬はがっくり項垂れた。「一瞬でも見た目でビックらこいた自分が恥ずかしい」

飯田は苦笑しながら勝馬を振り返った。

「仕方ないよ。人間なんて一瞬で分かり合えないって。普段はあの人は素顔でここに来る子供たちに応対しているんだけど」

「だけど?」と結城に促されて飯田はため息をつく。

「あの団体の教祖様がヤバい人でさ。彼の顔を悪魔が憑りついたとか前世で悪い事をしたとか決めつけるの。だから今日は覆面を着用しているの」

「ホント最低」と秋菜はジト目で吐き捨てる。

 

―少年自然の家資材置き場

 空はどんよりと曇っていた。

「雨の中での飯盒炊飯というのも風流だったねぇ」

と都は物置部屋に鍋などの野外炊飯セットを返しながらレインコート姿で結城に振り返った。

「炊事場は屋根ついていたし、雨を見ながらのカレー、結構楽しかったかも」

と瑠奈。

「とりあえずもう今日は外には出ないようにね。夜からは本降りになるから」

所長の小沢が指示を出した。

 

―少年自然の家ロビー

 スマホで撮影した動画にはかまどにバケツの水を派手にぶっかけている動画が映り込んでいて、その後綺麗にした映像が映り込んでいた。

「うん、大丈夫ですね」それを千尋スマホで見せられた車崎は頷いた。

「これなら見に行かなくても大丈夫よ。こんな嵐だしね」

と飯田が頷いた。

 その時だった。

「貴方たち、私の部屋にシーツの準備がされていなかったわよ」

と紫色のドレスに宝石で着飾った性格の悪そうなスタイルのいい女性が、さっきのおばさん、古市淑子に高飛車に命じる。一緒になって怒られているのは彼女の娘だろうか。

「全く、本当に貴方はダメな信徒ね。最近は勧誘の成果も上がっていないし」

と蔑むように古市に絡む女性、石橋秀子(34)。古市は年下の女に馬鹿にされて不細工な顔を物凄い表情で歪めている。

「おいおいやめないか」と石橋秀子の夫、石橋祐輔は妻を制しようとする。

「真菜が正しい道を進んで神のもとに行ったからこそ、謙虚にならないといけないんじゃないのか」

「あら」

と秀子は夫を睨みつける。

「さっきあなたは教祖様に怒られていたそうじゃない」

「え」

「もっと自信をもって教えの正しさを実践した娘を誇りに思いなさいよ。あなたはここにいる馬鹿親子よりもマシな存在なんだから」

ぐぬぬ顔になる古市を石橋はさらに蔑む。

「娘と2人で教えを広めても全然成果は上がらないし。私の娘はね。私がちゃんと正しい教育をしたから正しい選択をして神のもとに行ったの。あんたは私の言うことを聞いていればいいの。私に尽くすことでしか役に立たないんだから。そのようにすればいいの。ああ、やだやだ」

そう言って歩き去っていく石橋秀子。

(うわー、あのおばさん言われっぱなし)と秋菜。

古市は石橋の後ろを見ながら顔を醜悪にゆがめ、

「あんたのせいよ! あんたが真菜ちゃんのようになれば良かったんだから」

と横に立っている娘、古市寛子(15)の髪の毛を引っ張ってゆすった。

「ちょっと、何やっているんですか」

秋菜が凄い剣幕で喚いた。「これは暴力ですよ」

「何よあなた!」古市が凄まじい鬼の形相で秋菜を見たその顔面5㎝に秋菜のソックスの指先が突きつけられる。

「暴力はやめましょう…」

古市は怯えた表情で後ずさりし、そして踵を返してドスドス歩いて行った。

「大丈夫?」

と秋菜が寛子に駆け寄る。

「大丈夫です…」

とおさげの気の弱そうな少女古市寛子は首を振った。

「母は、ハルマゲドンの後で私を天国に連れて行って幸せにしたいだけだから」

そういうと寛子は母親の後をつけていく。

 その直後、雷光が窓から光って来た。雨はどんどん強くなってくる。

「今、さりげなくハルマゲドンとか言ってたよね」と千尋から秋菜の後ろから声をかける。

 

食堂にラジカセを置いた小柳慶喜教祖はBGMを流し始め、それに続いて石橋祐輔と信者の男の子たちは歌いだした。

―立ちはだかる恐れの壁、神が共にいて道を開く♪-

 

「ふふん♡」

石橋秀子は上機嫌で傘をさして暗くなり始めた雨のトレイルを歩いていた。

「教祖様が私だけに何か特別な教えを授けてくれるなんて、どんな教えなのかしら」

秀子は恍惚とした表情で置手紙を見る。

「きっと真菜のおかげね。あの時私と真菜が本当の信仰を貫いたからこそ、教祖様は私だけに特別な真理を教えてくれるんだわ」

そういう真菜の後ろから何か別の黒い影が近づいてくる。

「ハァハァ」

不気味なデスマスクを着用した人物が黒いマントと斧を持って歩いて、不用心に暗闇の森の中を歩く女性を追跡していた。ふいにその人物の足が水たまりを跳ねた。人の気配を感じて「教祖様」と振り返った石橋秀子の背後に、斧を持った殺人鬼が現れた。

「え」

石橋秀子はその姿を理解するのが遅れた。

 

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三白眼かわいいね様(北谷勝馬

「ハゲマゲドン?」

と食堂で勝馬が間抜けた声を出す。

「ハルマゲドン。最終戦争だよ。聖書に書いてある人類の滅亡。よく隕石が落ちる映画の題材になっているだろ」と結城がサラダを頬張りながら言う。

「あ、なんか変な顔のおっさんとマクレーン刑事が隕石に乗って銃を撃ちまくる映画がそんな名前だったような」

勝馬は鈍い頭でだいぶ前に金曜9時に見た映画を思い出す。部屋の食堂ではスタッフの飯田由利が洗い物をしていて、時折嫌そうに小柳教祖と愉快な信者たちがたむろする席を見つめている。

「なるほど」

勝馬はジト目で小柳慶喜が石橋祐輔と男の子数人に変な歌を歌わせているのを見つめる。

「その聖歌隊はそれを信じていて、その日になればブルース・ウィルスでも核弾頭でもなく自分たちの神様が自分たちだけを救ってくれると」

勝馬は焼きそばをもごもごしながら小柳たちを見る。

神の国はライオンが草食動物になんていて、みんな永遠に幸せに生きられるんだと」と結城。

「へー、神様を信じない奴はどうなるんだ」

勝馬は数時間前の元恋人に質問する。

「鳥に食われるらしい」

結城はチキンの唐揚げを口に放り込みながら言った。

「なんで地球が滅亡して鳥が生きているんだよ」勝馬はチキンの骨をへし折って髄液をチューチューしながら言った。

「お前はなんで絶滅人類みたいな方法で飯食ってるんだよ」と結城が突っ込みを入れる。そして彼はため息交じりにデジタル時計を見ながら呻いた。

「あーあ、男子の風呂時間まであと30分か。あいつら変な歌うたうのやめて部屋に帰れよ」

「なー」

ふいに勝馬が結城をじっと見た。

「大事な話があるんだが」

「お前まさか、俺に告白するつもりじゃないだろうな」と結城が「ウワー」とドン引きするのを見て

「違うわ!」

勝馬は喚いてから、

「今頃、女の子たちは風呂でどんな会話していると思うんだ?」

勝馬が物凄い真剣な表情で結城を見た。

「どうって…」結城が少し想像しつつ、「お前何かを考えているんだ」といぶかしげな眼で結城を見た。

「お前、いったい何を想像しているんだ」

「例えば、恋の話とかさ。胸の話とかさ」と勝馬がエロい顔つきになって結城に話しかける。

「アホか。そんな事を考えているから馬鹿王って言われるんだよ」

そういう結城に勝馬は「なんだよ、お前は気にならないのかよ」と肘で結城をつつく。

「何エロゲのハーレム主人公の悪友みたいな話をしているんだよ」

結城は突っ込みを入れつつ、心の中では(やべー、微妙に気になる)とジト目で顔を赤らめる。

(あいつらの中で一番デカいのは高野だよな。恥ずかしがっている高野の胸を薮原とかが揉んだりとか…やべぇ…想像しちまう)

 

―大浴場

「私は攻めるとしたら結城君だと思っていたけどさ。結構結城君が受けでも行けるんじゃないかなって会合のあれをみて思ったんだよね」

高野瑠奈がお湯の中で考え込む。

「やっぱり結城君と勝馬君は無限の可能性はあるわ」

千尋

「うちのお兄ちゃんをネタに何考察しているんですか」

と秋菜がお湯の中でジト目で2人を見つめ、都は嬉しそうにお風呂で犬かきしている。

「秋菜ちゃん、泳げるよ」

 その時、雷光が光った。雷の音。都は秋菜に抱き着いて*1になっている。

「なんか凄い雷と雨になって来たよね」

瑠奈がそう言いながら大浴場の大きめの窓の外を見たときだった。そこにフラフラと何かが黒い影が見える。次の瞬間に雷光が光り、それが血だらけの石橋秀子である事がわかったとき、秋菜と瑠奈が目を見開いた。都は必死に窓ガラスを開けようとするが、窓ガラスに開く場所はない。

「都」

千尋の声に都はタオルを巻いた裸で「怪我をしているみたい。すぐに助けないと!」と叫んで裸のまま脱衣所に出ようとした直後だった。

 石橋秀子は血だらけで窓ガラス越しに瑠奈と秋菜の裸に手を伸ばそうとした。その脳天に、それこそ目の間を割って鼻に至る場所に斧の刃物が食い込んだ。秋菜と瑠奈、千尋が目を見開く前で、石橋秀子は目を血走らせ、そのまま前のめりに倒れた。

 被害者の躯の後ろから、ガラス越しに都と秋菜と瑠奈、千尋の目の前に現れた黒い影。それは不気味なデスマスクの仮面を着用して黒いマントをたなびかせ、」斧を所持した殺人鬼の姿だった。

「きゃぁアアアッ」

少女たちの悲鳴が響き渡った。

*1:+_+