少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

魔法少女殺人事件ファイル4

魔法少女殺人事件【③転回編7.8】
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■容疑者
・早見桜(19):女優。都の憧れの存在。
松原時穂(28):マネージャー
・向井慶太郎(21):俳優、アイドル。
・川沼梓(17):女優。
本郷匠(44):俳優。
・副島卓彌(61):映画監督
・下北岡正嗣(29):カメラマン
ウメコデカメロン(47):タレント
清水想(23):AD
・甲本丈(46):芸能プロダクション社長
・山川仁:岩窟城オーナー
 
7
 
「清水・・・」
副島監督が真っ青な表情で惨劇を見つめる中、
「あ、秋菜!」
結城が絶叫を上げて秋菜に駆け寄る。彼女の胸から溢れ出る血を、桜は懸命に抑えていた。
「胸を刺されてるの! いま血を抑えている」
「じょ、冗談だろう・・・・」
結城は怯えた表情で頭を抑えた。
「こ、こんなところでこんな怪我をしちまったら・・・救急車も来れないで・・・どうすりゃいいんだよ」
「落ち着いて」
都は結城の手を掴んだ。
「秋菜ちゃんは大丈夫」
「大丈夫なわけねえだろうが、こんなに血を流して」
秋菜は苦しげに息をしながら顔を歪める。
「結城君がそんなに怯えていたら、秋菜ちゃんが心配しちゃうよ」
都がまっすぐ結城を見た。
「お兄ちゃん・・・・」
苦しそうに息をしながら秋菜がうっすら目を開けた。
「ごめん」
「なんで謝るんだよ」
結城は真っ青になりながら秋菜を覗き込んだ。
「我が儘言って・・・・勝手に行動して・・・・・」
秋菜の目から涙がこぼれた。
「痛い・・・痛いよ・・・・お兄ちゃん・・・・助けて・・・・」
「俺はここにいる・・・ここにいるから」
秋菜の手を握って結城は言った。
「お兄ちゃん・・・・お兄ちゃん・・・・」
秋菜はうわ言のように声を上げた。
「凶器はこのナイフだね」
鮮血の飛び散った肉切り用のブッチャーナイフを見つめながら都は言った。
「大丈夫。こんな太くて先が丸いナイフ・・・肋骨の中にまでは入らないよ」
桜は傷口を押さえながら汗だくのまま笑った。
 しかし、彼女の胸の傷は広範囲で、おそらく犯人は倒れた秋菜の胸に何度もブッチャーナイフを突き立てようとしたようだ。小さな乳房から、彼女が呼吸するたびに血が泉のように流れているのが服の上から感じられる。その呼吸はとても苦しそうで、彼女は激痛と恐怖でガタガタ震えていた。
「あ、えっ」
突然秋菜が悲鳴に近い咳をした。口から血が幕を張って飛び出す。
「嘘」
「肺か!」
結城が思わず声を上げた。
「息が・・・・」秋菜が声を上げた。「息が出来ない・・・・怖い」
このまま肺に血がたまったらどうなるんだ・・・。結城は真っ青になった。
(おい、頼む・・・・神様助けてくれ)
「師匠を呼んで・・・・」
秋菜が苦しげに声を上げた。
「喋るな・・・・馬鹿・・・・・」
結城が秋菜に言った。
「喋れなくなる前に・・・師匠に・・・さ、刺した犯人を・・・・うっ・・・・」
「秋菜ちゃんは喋れなくならない!」
都が涙目で声を出した。
「しゃべれるようになったら聞くから!」
「いいや、言え! 誰が犯人なんだ!」
向井慶太郎が気色ばんだ。
「山川か? 山川先生だったのか?」
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
秋菜は虚ろな表情で、その場にいる人間を見回した。ウメコデカメロン、桜、梓、副島、向井、下北岡・・・。
「この中には・・・・いません・・・・」
梓は声を上げた。苦痛の中で記憶があやふやになっているのだろう。それでも、ここにいる一同を見回してから、秋菜はゆっくりと頷いた。
そして、苦しげに息を吐きながら目を閉じた。
「やっぱり山川か・・・」
副島が苦々しげに言った。
「奴はこの娘と面識がないからな・・・・こいつは楽しんでいるんだ。人を殺してこんな祭壇に乗せて!」
「秋菜ちゃんの為にも、山川さんを早く見つけたほうがいいよね」
梓は声を上げた。
「梓ちゃん?」
都が聞く。
「あの人はアマチュア無線家で登山の最中によく電波を飛ばしているって言ってた。その無線機を山川さんが持っているかもしれない」
「ほんと!!!!!!!」
都の目がパァっと輝いた。
「それがあれば助けを呼べるわよねーーーー」
下北岡が我関せずというように鼻歌を歌いながら、清水の無残な献祭を写真に撮影している。
「私は嫌よ」
ウメコが声を上げた。
「あんな殺人鬼を捕まえない限り無線機が手に入らないなんて・・・あなたたちで山川を捕まえなさいよね」
「俺は勘弁だぜ」
向井は言った。
「俺は生きて帰ってこの事件で世間の女の子にチヤホヤされるんだ。生きて帰れなかったら楽しめないじゃないか」
「お前らに助けて欲しいなんて思わねえよ」
結城は唸った。「それからそこのカメラマン・・・」
彼の目は殺意に満ちていた。
「俺の妹にカメラを向けるな。殺すぞ」
ぞっとするような結城の視線に、下北岡は初めて見せる怯えようで写真のレンズを下ろした。
「結城君は秋菜ちゃんを守ってあげて」
桜は両手を血に染めたまま立ち上がった。
「私は、都ちゃんと山川さんを探してくる」
「女の子2人でか・・・・」
「私も一緒だよ」
梓も頷いた。結城は不安だった。しかし都にまっすぐ見つめられ、頷いた。
 
 廊下で都は考えていた。
「犯人は本当に山川さんだったのかな」
そう都が呟いて、桜は
「え、違うの?」
と大して驚きもせずに都に聞いた。
「でも、秋菜ちゃんは犯人はこの中にいないって・・・・」と梓。都は「うーん」とうなってから
「秋菜ちゃんはすごく苦しそうな思いをして、なんとか言った言葉だよ。多分記憶とかも混乱してたと思う。でもあの地下室にいた人たちの顔を順々に見ていたから、犯人が地下室にいた人たちじゃないってことは間違いないと思う。でも地下室にいない人だったら?」
と言った。
「甲本社長・・・・」
梓はつぶやくように答える。そして思い出したように言った。
「そういえば、清水さん、殺される前に誰かに殴られて目を腫らしていたよね。殴った人が甲本社長だったらそうかもしれない」
「あれは、カメラマンさんが犯人だよ」
都は梓に向かって目をぱちくりさせた。
「え、犯人じゃなかったんだ」
桜は言った。
「うん・・・だからそれは甲本さんじゃないんだよ。とにかく・・・私は甲本さんにこれから会おうと思う・・・そして甲本がもし秋菜ちゃんを刺した犯人なら・・・絶対に許さない」
都はそう言って前を見た。
 
 甲本の部屋の前で、都は扉をノックした。
「甲本社長・・・島です! すいません、事件について聞きたいことがあるんです」
「島都か・・・・」
扉が少し開いて、中から甲本の声が聞こえた。
「島都一人だけで入ってこい」
都は扉を少し開いて小柄な体を「うんしょ」と中に入れようとする。
「都ちゃん・・・」
桜は心配そうな顔で都を見た。都は「大丈夫だよ!」と言った。
 部屋の中で甲本は安楽椅子に腰掛けていた。
「鍵をかけろ」
彼に言われて都は鍵をかけた。
「甲本社長・・・・ADの清水さんが地下倉庫でバラバラにされて殺されました」
「清水が?」
甲本が驚いた表情で言った。
「驚いたでしょうね。あなたはこの事件が2年前の早見穂乃果さん殺害に関わった人への復讐だと思っていたはずですから。清水さんは2年前の事件とはなんの関係もない。つまり、この事件の動機は穂乃果さんの事件とは無関係かも知れないんですよ」
「お前、なんでそれを」
甲本が鬼の形相で都を見る。
「私に喋りそうな人ばかりじゃないですか、この館の人は・・・・だけど、妙なんですよ。清水さんが最後に目撃されてから、死体が見つかるまで1時間しか経っていないんです。人を殺してバラバラにして死体を飾り付けするには30分じゃ無理だと思います。犯人は清水さんが最後に目撃されてから、30分以上アリバイがない事になります。さっき桜ちゃんが聞いてくれました。ウメコさん、下北岡さん、副島監督、向井さんの4人は10分以上下のロビーから離れていません。多分こういう殺人事件が起こる場所で一人になったらやばいと、ドラマを見て勉強していたんだね。そして桜ちゃんはずっと私と一緒にいました。彼女も10分以上、私と離れていません。つまり、甲本さんと梓ちゃんだけが、この第三の殺人事件でアリバイがないんですよ」
「フフフフフフ」
甲本は不敵に笑った。
「ドアを開けてくれ、都ちゃん・・・梓を入れてくれ」
甲本に言われ、都はじっと甲本を見つめながらドアを開けた。
 梓は、自分が呼ばれるのを予測していたのだろう。ドアが開かれると、すぐに部屋に入ってきた。
「梓・・・僕はこの1時間、どこで何をしていた?」
甲本は尊大な口調で聞いた。梓は従順なロボットみたいに答えた。
「私はこの部屋で、1時間以上一緒にベッドで寝ていました」
都は驚いた。そして自分の敗北に歯ぎしりした。梓を女の子として辱めてしまった。
「そういう事だよ。私と梓のアリバイは完璧なんだ」
甲本はぞっとする笑みを浮かべた。
「さて」
甲本は外に歩み出た。
「清水が殺されたってことは必ずしも私が標的とは限らない。という事は皆と一緒にいたほうがいいだろう」
得意げに歩く甲本。だが階段に出たところでその歩みが止まった。
 階段の真正面に人間の体が横倒しになっていた。納棺の時みたいにまっすぐ手を上に組んで・・・。しかし首だけは定位置にはなかった。胸の上に乗せられ、初老男性の苦悶に満ちた表情を浮かび上がらせていたのだ。
「山川先生!」
甲本が絶叫した。
 都は一瞬真っ青になった。山川が殺されているとなれば、秋菜を助ける無線機の行方は・・・。
 倒れそうになる都を桜が抱える。
「大丈夫。都ちゃんは犯人を見つけて秋菜ちゃんを助けられる・・・大丈夫!」
桜はそう都に叫んだ。
 
8
 
 山川仁の死体の周囲に、結城兄妹以外の全員が集まっていた。
 空はすっかり白み始めている。
「死体にはドライアイスが詰められているわね」
下北岡が撮影しながら言った。
「この分だと、私たちがここに来た時には殺されていて、どこかに隠されていたみたいね」
ウメコデカメロンが恐る恐る向井の背中越しに覗き込む。
「嫌よ・・・私、バラバラになんかなりたくない」
「犯人がばらばらにしているのは男だけです。松原マネージャーは焼かれただけですから大丈夫ですよ。まあ、豚肉のバーベキューなんて見たくありませんが」
向井が「けっ」とせせら笑う。
「最低」
都をさすりながら、桜が小声でぼそっとつぶやいたが喧嘩するエネルギーは残っていないみたいだった。
 しかし都は向井の発言に、何かを感じた・・・気がした。
「しかし、まいったな。みんな部屋に戻ろうってことになったから、この事件、死体を運んだアリバイなんてないぞ?」
副島が頭を押さえた。
「残念だな。私にはアリバイがある」
甲本は笑った。
「なぜならこの女子高生探偵が階段を上がってきたとき、死体なんてなかっただろう。そして、彼女は一直線の廊下を歩いて私の部屋に来たんだ。私に死体を運ぶなんて無理だよ」
「そうとは限りませんよ」
向井がせせら笑った。
「あなたの隣の部屋は空き部屋だった。鍵もかかっていないようですね」
向井は隣の部屋のドアを開けた。
「さらに部屋の外はバルコニーを飛び移れば行き来できる。つまり彼女が階段を通り過ぎるのを待って、どこかに隠してあった死体を出現させ、彼女があなたの部屋へ向かうため階段に背中を向けている間に素早く隣の空き部屋に入り、バルコニーから自分の部屋に戻ったというわけですよ。あなたたち、待っている間、階段の方を見ました?」
向井に聞かれ、梓は「い、いいえ」と答えた。
「つまり甲本社長・・・あなたにも犯行は可能だった」
向井は宣告した。
「冗談じゃない!」
甲本は喚いた。
「貴様何様だ? 俺は清水が殺された時間帯、ほとんど川沼と同じ部屋にいた。奴が自分の死体をバラバラにして飾らない限り、俺には犯行は不可能だよ!」
その言葉に、都は目を見開いた。
-奴が自分の死体をバラバラにして飾らない限り・・・・
 都は一人空き部屋に入った。桜が後ろから付いてくる。
「都ちゃん、どうしたの?」
桜が小首をかしげる
「本当に甲本さんが犯人だったら、バルコニーに足跡が残っていると思うんだよ」
と都はバルコニーに出た。
 そこにはくっきりと、凍った雪の上に足跡が残っていた。それはバルコニーの手すり、そして甲本の部屋のバルコニーにもくっきり残っていた。誰かが飛び移った証拠だ。
「足跡・・・じゃぁまさか本当に、甲本社長が・・・」
桜は声を震わせた。
「ううん、そうじゃない・・・。甲本さんは犯人じゃないよ」
「え」
桜が驚きの声を上げた。
「この雪、凍りついているよね。もし犯人が死体が出てきたさっき飛び移ったとしたら、氷が割れちゃうはずなんだよ。だけど凍った雪にはヒビひとつ入っていない。犯人は雪が凍る数時間前にこの足跡をつけたことになる。今日は雪が降らないと踏んで、あらかじめ甲本社長に罪を着せる偽の証拠を残しておくために・・・・」
「都ちゃん・・・・もしかしてその人が誰だかわかってるの?」
「うん、大体」
都は言った。
「だけどこの館で生き残っている人10人には全員アリバイがあるはずだよ」
桜は言った。
「そのトリックも大体わかっているよ」
都は言った。
「だけど、そうなるとひとつだけ疑問が有るんだよ。私が犯人だと思っている人は、さっき向井さんが言ったトリックを仕掛けられる立場にない。第4の事件には唯一絶対のアリバイがあるんだよ。それに完璧なトリックを仕掛けた犯人がわざわざこんな見られればお陀仏なトリックを仕掛けるってことは、何か大きな意味があるんだよ・・・桜ちゃん・・・・」
都は桜を見た。
「桜ちゃん、何か知らない? 廊下で私と梓ちゃん待っていた桜ちゃんなら、何か見ているかもしれないんだけど」
「知らないなぁ。私ボケーっと待ってたからなぁ」
「そっか」
都は笑った。
「でも良かったよ」
桜は言った。
「都ちゃんが捜査ができる感じになってよかった」
「本当はおしっこ漏れちゃいそうなくらい怖いんだけど、秋菜ちゃんの為だもん。桜ちゃんが励ましてくれたおかげだよ」
都はにっこり笑った。
 その時、梓が落ち込んだ状態で「はぁ」とため息をついて現れた。
「男の人の前で、私と甲本社長が同じ部屋にいたって知られちゃった」
「梓ちゃん・・・もし嫌だったんなら警察に行ったら?」
桜は言った。
「ダメだよ。有名な芸能事務所だよ。穂乃果ちゃんの時だって、所轄のおまわりさんが動いてくれたけど、本庁の偉い人が止めちゃったじゃん。同じことになったら、大人だよ・・・私どんな目に遭うかわからないよ」
そういう梓の背中をさすりながら、桜は部屋を出た。
 一人残された都は、それを黙って見送った。彼女は確信していた。この事件の犯人が誰なのかを・・・そしてその人物がどんなトリックを仕掛けたかも。
 そして、桜がその犯人をかばおうとして、最後の事件でしてしまった事も・・・。
「桜ちゃん!」
都は廊下に出て桜と梓の背中に叫んだ。
「私! 犯人がわかった! みんなを呼んでくれないかな。下のロビーに」
桜は怪訝な顔で都を見たが、大きく頷いた。
「わかった!」
 
 都は、結城と秋菜が休んでいる1階の部屋にやってきた。
「秋菜ちゃんは?」
「意識が朦朧としてきてるな」
都に聞かれて、結城はため息をついた。秋菜は「はぁはぁ」と苦しげに息をしている。
「結城君。謎は全部解けたよ。今桜ちゃんに事件関係者全員にロビーで集まってくれるよう言ってもらった。大丈夫! 犯人を見つけ出して無線機を教えてもらって、それで助けを呼ぶから」
「ああ、頼む。秋菜・・・もう少しの辛抱だ」
結城はそこまで言ってから、
「都・・・そのトリックと犯人。簡単に俺に教えてくれ。俺、秋菜と一緒だから、事件の真相聞けねえ」
「そうだね・・まず犯人はあの時おかしなことを言った川沼梓ちゃんなんだよ・・・・」
都はそこで少し悲しそうな表情で、1分にまとめて犯人が川沼梓である事、彼女が使ったトリックを話した。結城は黙って聞いていたが、都が話し終わると、
「お前がそういうんならそうだろう」
と言った。
「でも過去に人を殺した人間としてのカンなんだが・・・」
結城はここで都に自分のカンを話した。都の目が見開かれる。
「まぁ確かに、カンって言ったらカンなんだが・・・ただお前が言うトリックなら、別に犯人はお前がここに来る機会を利用する必要はなかったわけだ」
都の耳は結城の話を聞いていなかった。
 都は真っ青になって、これまでの出来事を全て思い出していた。都はここで、本当の意味で真犯人に利用されていたことに気がついた。
 こんな恐ろしいトリックがあったなんて・・・・。
 そしてそれに至る動機にも思い至り、都はガクッと崩れ落ちそうになった。だが、秋菜が苦しそうにうわごとで「師匠」と呟いた瞬間、足を踏ん張った。
「結城君・・・全部わかった」
都は深淵にたどり着いた口調で言った。
「行ってくる」
都はそれだけ呟くと、部屋を出ていった。
「都・・・・・」
結城は彼女が消えたドアをジッと見つめた。
 
 黒い影が、穂乃果の写真を見ていた。
「やはり殺すしかない。もうひとり殺すしかないんだ。穂乃果・・・許して・・・・・」
黒い犯人は穂乃果の写真を部屋に置くと、都が指定したロビーへと向かった。
 ロビーには大勢の人が集まっていた。都は全員集まった事を確認すると、深呼吸してしゃべりだした。
「これから、この事件の真実を話そうと思います」
「何これ・・・名探偵の推理トリック?」
ウメコが訝しげに聞く。
「最後に人を集めて喋るっていう推理ショーですか」
向井がやれやれといった表情で言った。
「その通りだよ」
都は言った。
「なんならコナン君や金田一君みたいに言ってもいいよ。山川先生、本郷さん、マネージャーの松原さん、ADの清水さん・・・この4人を殺した『屍蝋鬼』はこの中にいます!」
 
 
つづく
 
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さぁ、全ての手がかりは提示された。
果たして犯人は梓ちゃんなのか。それとも生き残っている7人の容疑者の誰かなのか。
都ちゃんを完全に騙した恐るべきトリックとは!
 
第一の密室の謎、第三のアリバイトリック、第四の犯行の意味を考えつつ、是非犯人を考えてみてください。
 
■容疑者
・早見桜(19):女優。都の憧れの存在。
松原時穂(28):マネージャー
・向井慶太郎(21):俳優、アイドル。
・川沼梓(17):女優。
本郷匠(44):俳優。
・副島卓彌(61):映画監督
・下北岡正嗣(29):カメラマン
ウメコデカメロン(47):タレント
清水想(23):AD
・甲本丈(46):芸能プロダクション社長
山川仁:岩窟城オーナー