少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

イシマタクロウという呪い【3-4】

 
3

 

 国道349号線の山間の道に「日立市」の看板が見えた。北谷勝馬が運転し島都が2ケツするカブがその横を通り抜ける。小さな集落に2人は到着した。
「ここみたいですね」
とバイクを降りた勝馬が小さな村をぐるっと見回す。ふっと都は村の役所支部掲示板を見つめた。リラックマみたいな熊がイラストで描かれ「熊に注意」と書かれている。
「へー、こんなかわいい熊さんが出るんだ」目が輝く都。
「こんな堅気の熊とは戦えませんね」と勝馬都はじーっと熊を見つめてふと何かに気が付いたようだった。
「ここからどうやって探します?」勝馬は熊みたいな体をキョロキョロさせる。
「勿論、これを使うんだよ」
都はイシマタクロウの顔写真と「この人知りませんか」の文字がプリントされた紙をずいっと突き出す。
「これを村の人に見せて」
都はベンチに座っているばあさまにこれを見せる。
「おばあちゃん、この人知りませんか」
「おおお、知っておるよ」おばあちゃんがケラケラ笑う。
「早‼」勝馬が素っ頓狂な声をあげた。
「この前一緒に東京オリンピックをテレビでみたかのう。今日は一緒に日立へ行く予定だから。一緒に待っていれば会えるぞよ」
「おおおおおお」
都は手をぱちぱちする。これは幸先いいと思った。だがやってきたのはおじいちゃんだった」
「じいさまぁ」「ばあさまぁ」2人は手を取り合ってキャッキャうふふする。
「あ、じい様。この子たちがじい様に用があるんじゃて」
おばあさんはじい様に言ってくれる。だが勝馬も都も目を点にしたままだった。
 ミニバンタイプのコミュニティバスが集落の真ん中の停留所から発車していく。
東京オリンピックって、第二次世界大戦より前の方じゃないですか」
勝馬はひっくり返った。
勝馬君。前のオリンピックはそんな時代じゃないよ。確か室町時…」
都はそこまで言ってからバスを降りた女子中学生、2人ともラケットを持っている…にぴょんと駆け付けて、手製の尋ね人ペーパーを見せる。
「この人を知りませんか?」
「この人?」ショートヘアの少女が「ああ」と口を開きかけたとき、おさげの方の少女が「知りません!」と慌てて声をあげて友人を遮った。
「そうそう、知らないです」
とショートヘアの少女は慌てておさげの少女に顔を合わせる。おさげの少女はショートヘアの少女の手を引っ張って走り出した。
「やっぱり知らないみたいですね」
勝馬がため息をついたが、都は「あの子絶対この人の事知っている」と言って、「尾行するよ!」と言った。
「待っていました」
勝馬はリュックからイエローベストとヘルメットを取りだした。説明しよう。この工事現場のおっさん変装セットは、工事現場のおじさんになりきる事で、尾行相手にバレにくくする変装セットなのだ。
 おさげの少女は友人と別れて段々畑を歩いている時に、ふと振り返った。ヘルメットに黄色いベストをした変な人が赤い棒を振っている。周りには段々畑しかない。少女は家の前で再び振り返った。さっきの人がお地蔵さんに向かって誘導行動を取っている。おさげの少女の頭の中で本当に怖いBGMが流れた。
「お父さん、お父さん!」
おさげの少女は大慌てで玄関に駆け込んで、赤ら顔に毬栗頭の壮年のいかにも田舎な格好の男性、平信二(55)を呼んだ。平が「どうした」と声をあげると、おさげの少女、青野日葵(14)が「工事現場の人形のコスプレをした変な人にストーカーされているの」と大声で叫んだ。
 平が外に出てみると、何もない道路の真ん中で工事現場の誘導をしている変な青年が不細工な顔をしかめて、擬態行動を成立させているかのように棒をひたすら振っている。
「何しているの」
平がジト目で勝馬に声をかける。
 
 そのころ都は平の自宅である日本家屋に入り込んだ。縁側は全開であり、簡単に中に入ることが出来る。
「お邪魔します。もし入っちゃダメなら入っちゃダメって言ってくださーい。はーい、入っちゃいまーす」
そう言いながら都はちゃんと許可を取って縁側から中に入った。室内には勉強机が2つ。そして大勢の子供たちに囲まれている平信二の写真があった。ふと押入れが見えたので開けてみると、厳重にビニールコーティングされたスーツケースが出てきた。かなり大きく大人でも頑張れば入る。都はそのケースを軽く持ち上げてみて重さをチェックしてみた。さらに押入れの奥にあるものを引っ張り出してみる。それを手にして都は目を見開いた。ビニールコーティングされたそれは血だらけの木刀だった。木刀の柄の部分はアルミホイルで撒かれているが、そこに一瞬邪悪な笑みを浮かべる顔が映り込んだ。
 都はふっと顔を上げた。誰かに見られているような気配がして振り返ったが、誰もいない。都は木刀とスーツケースを押し入れにしまう。
 都は庭に出てみると、
「うちの娘にストーカーするとはいい度胸じゃないか」
と平が勝馬を詰めていた。
 都は黄色い帽子に赤いランドセルを着用する。説明しよう。これは島都ちゃんが尾行の時、いつどこでもJSに変装可能な特殊アイテムなのだ。
「今日も学校楽しかったな。早く帰って宿題しなきゃ」
わざとらしくスキップして現れる島都。
「おおお、お兄ちゃん。工事現場のおじさんごっこ一緒にしてくれるって言ってたじゃん!」と勝馬の横に立つ。
「ごめんなさい。お兄ちゃん私とこの女の子を間違えちゃったみたいで。じゃ、早く帰って工事現場のおじちゃんごっこやろー」
都はそう言って勝馬の腕に抱き着いてそのまま引っ張っていった。
「な、なんだ…あれ」平が呆気にとられた声を出す。
「あの人、イシマタクロウを探してた」
と日葵。それに平は「何だって!」と青ざめた表情で娘を見つめる。そんなやり取りを植込みの間から無表情なイシマタクロウのこの世のものとは思えない青白い顔が見つめる。
 
「ああ、平さん」
公民館の和室で俳句を呼んでいるおばあちゃんAが、俳句の紙を手にする都に言った。
「知っているわよ。だって、元県議だもの。それでいて誠実で低姿勢で、しかも大勢の子供たちの里親になっていて。とても立派な方よ。ホラ、見せてみなさい」
おばあちゃんAは都の俳句を見た。
「-目玉焼き、たこさんつけて 食べたいな」
「うふふふふふふ、可愛いわね」とおばあちゃんB。
「今もあのおうちにはいっぱい子供がいるの?」と都。
「今は中学生の青野日葵ちゃんという女の子と、もう一人タクロウって名前の若い男の子がいるわね」とおばあちゃんB。都と勝馬が目を見開く。
「そのタクロウさんてどんな人なんすか」と勝馬君。
勝馬君。それより貴方の作品を見せてよ」おばあちゃんCが勝馬の作品を取り上げてチェックする。
「-ケンシロウ、北斗残悔、積歩拳」
「おお、勝馬君。ケンシロウが出てくると難しい漢字が書けるんだね」と都が目をキラキラさせる。
勝馬君。この何か大切なものを投げ捨てるような表現ではなくて、包む様な日本古来の精神を心掛けて作ってみるといいわね」とおばあちゃんC。
「ちなみに私はジューザ様推しよ」
ばあさまの告白にΣ(・ω・ノ)ノ!という表情の勝馬
「素晴らしい」とばあさまの手を握って興奮する。「今拳王の行く手を雲が止めたぁ」千葉声を出す勝馬。「今無敵伝説に終止符を‼」千葉声を出すババア。
勝馬君、ケンシロウより、イシマタクロオオオウ」と手をバタバタさせる都。
 
「イシマタクロウか」
とハーフで茶髪ウェーブの女子大生がメロンソーダの前でため息をついた。ここは駅前のファミレス。結城と千尋が話を聞いている。
「小学校の頃はどんな奴でしたか。こいつに関わった人間が真人間だったのが突然凶暴になって、犯罪者になって次々捕まっていると聞いているんですが」
「そうなの?」
女子大生加藤シャーロット(18)は怪訝な顔をした。
「どんな人間だったのか教えていただきたいのですが」と結城。「例えば小学校時代、サイコな一面があったとか」
「あ?」加藤シャーロットは途端に物凄く怖い目で勇気を睨みつけた。
「私たち、好奇心とかで聞きたいわけじゃないんです」千尋が横から声を出す。
「ただ私の友達が犯罪に巻き込まれて…それを助けるためには、どうしてもイシマタクロウという人について知らないといけないんです」千尋はここまで言ってから目をぱちくりさっせた。
(そういえば、私ら何でイシマタクロウの事を調べているんだろう)
「わかった」加藤シャーロットは答えた。
「ただ君らの予想と違って、イシマタクロウは真面目で大人しくて親切な奴だったよ。ちょっと不器用で物の理解が遅いところはあったし、サイコ呼ばわりもされていた。だけどサイコ扱いしていたのはあの村田ってセンコーだよ」
「あのー」結城がおずおずと聞く。
「その村田照男っていう教師。イシマタクロウに出会う前はいい先生だったって話は本当ですか」
「悪い噂は聞かなかったね。ただあのセンコーがイシマに目を付けて虐めるようになってから、周りも虐めるようになってさ。だけどあいつ親にもあんまり愛して貰っていなかったから学校や住む事が許されなくて、毎日学校に来ていたよ。どんなに先生や生徒に酷いことされてもニコニコニコニコしてさ。確かにクラスの雰囲気は悪くなっていったかもしれない。ああ、村田が捕まったころにもう一人鹿背山アリスってうちのクラスメイトが恐喝で捕まっているんだけど。あしつも元々は優しいいい子だったんだけど…イシマと同じクラスになってから性格が歪んだんだよね」
「知っています」結城は言った。加藤シャーロットはため息をついた。
「少なくともあれは性格が歪んだのはイシマのせいじゃないよ。村田にエコひいきされていてさ。エコひいきされるのって割と虐められ要素だから、焦った鹿背山は咄嗟にイシマを虐めるようになったんだよ」
シャーロットはふと明後日の方向に言った。
「あいつ生きているかな」
ふとその目に涙が浮かんだ。
「バイト先の回転ずしでも酷い目に遭っていたらしいよ。給料を全部取り上げられて、店長の家のバラックに住まわされて、奴隷みたいな扱いを受けていたって話は聞いていた。一応警察には言ったんだけどさ。何もしてくれなかった。両親もあいつの弟にばかり愛情を注いでさ、あいつが酷い目に遭っても無関心。そして2年前に行方不明…」
 
「2年前から」
と都がおばあちゃんの前で目をぱちくりさせる。
「ええ、あの子は里子じゃないわ。2年前から平先生の家に住んでいて。働き者で大人しい子だよ」
おばあちゃんBはそう言った。
「2年前って」勝馬が都を見つめる。
「うん、あのタクロウって人はやっぱりイシマタクロウ…2年前に失踪したあの人だったんだよ」
 
4
 
「って事は、やっぱりこの村に周囲を悪魔にする謎の人物、イシマタクロウは存在したって事ですよね」
勝馬が都に耳打ちする。
「あのー」
勝馬がふと老婦人たちにシツモーンする。
イシマタクロウって人に関わった人でいい人だったのに急に凶暴になって犯罪者になっちゃった人っていますか?」
都の言葉におばあちゃんたちは顔を見合わせた。
「そんな人はいないと思うけど」
「ただ」おばあちゃんAが思い出したかのように声をあげる。
「平先生、あまりタクロウ君を誰かに関わらせないようにしていたかな。彼が誰かと喋るたびに怖い顔をしてじっと見ているのよ」
「あー、そういえば」おばあちゃんBも合点する。
何か悪い事が起こるんじゃないかという感じでいつも監視しているのよね」
「監視…」と勝馬が呆然とする。
 
勝馬君」
都は公民館の前で勝馬に言った。
「私、あの平信二って人のおうちを調べたんだよ。勝馬君が工事現場のおじさんの振りをしている間に。あの人の家からとんでもないものを見つけちゃったんだよね」
「エッチな本ですか」
勝馬がどひゃーするが、都はスマホの写真を見せた。血の付いた木刀とスーツケースが映り込んでいた。
「ひいっ」と勝馬が目を見開く。
「これって殺人の凶器。そしてスーツケースにはまさか死体が」
だが都は首を振った。
「重さを確かめてみたけど、あのスーツケースには何も入っていないみたいだった。勿論、前には入っていたのかもしれないけど」
都は勝馬を見つめた。勝馬はホラー映画を見たような顔になっている。
「ただそう考えたとき、ちょっと変なんだよね」女子高生探偵は考え込む。
あの凶器の木刀やスーツケースをコーティングして保管する理由がわからないんだよ。だって殺した凶器や死体を運んだスーツケース。捨てちゃった方がよっぽど安全じゃん」
「確かに」勝馬が唖然とする。都はさらに考え込む。
「それにこの凶器を使って人を殺すか傷つけた人間が、隠れているかもしれないイシマタクロウって人なのか平さんなのかだとしてもこれをビニールコーティングしてまで持ち続ける理由は…やっぱり」
都は何か考えが浮かんだようだった。
 
「ちょっと待てよ」
結城はファミレスで考え込んだ。
「じゃぁ、イシマタクロウって男を酷い目に合わせた人間が何人も罪を犯して今警察署の同じ留置場にいるって事かよ。しかもイシマタクロウとは別の案件で」
しかも全員がイシマタクロウと言う人物に出会ってから元の優しい性格からDQNになっていると」千尋も考え込んだ。
「ただ、イシマタクロウがこいつらを洗脳したのか、DQNになるように焚きつけたなんて事はないから。アリスの場合は村田のエコひいきから自分を守るためにいじめっ子になってしまった。他の連中にも何か別の理由があるんじゃない?
加藤シャーロットはメロンソーダをちゅーする。
「何か知っていませんか?」
結城が聞くと、加藤は「村田とイシマの親については何も聞いていないなぁ」と首を振った。
「ただイシマの親は結構変なスピ団体にハマっていて、イシマタクロウに変な教育をしていたって中学生の時本人から聞いたことある」
加藤シャーロットの言葉に結城は「その団体ってわかります?」と聞いた。シャーロットは「『ドント・アクセプト』って団体だよ」と答えてくれた。千尋が早速スマホからチェックする。
「何だこの団体。何々? -LGBT発達障害を受容しない子育て。子供が健全に成長しようとする自己免疫を最近のリベラルが提唱する『受容』という概念が妨げています。子供のありのままを受容せず健康な子供になるために一切甘えさせない子育て。これが『ドント・アクセプト』の考えです―って?」
千尋がげんなりとした声を出した。
「おいおい」結城が幾分呆然とした表情でスマホの液晶を見つめる。
「ここに出ているこいつ。ピーメント山田じゃねえか。ホラ、この前都が言っていた迷惑系YouTuberの」
団体代表と握手しているのは確かにデブの迷惑系YouTuber、ピーメント山田だった。
「こんな奴が広告塔で、子育て親とかが集まるのか?」
結城はため息交じりに言った。だが千尋は冷静に答えた。
「ピーメント山田みたいなキャラって、一部の大人にはかなり受けているらしいよ。倫理とか法律とかで制御できないひたすら弱い人を苦しめて暴れまわる。それでいて親に対しては無償の愛を見せつける感じの? ピーメントだって親に家宅捜索が入った時にYouTubeで泣いて親の愛を叫んでいたよね」
「どんな都合のいいキャラだよ」結城はため息をつきながら千尋が体験談をスクロールするのを見つめる。
「てかそんな乱暴な奴に自分の息子がなったら、普通は親として恥ずかしくないのかな」と千尋
「うちの母親が言っていたけど、先生を交えた保護者会で、石間の母親が、自分の子供のダメなところをバンバン言って、それでどんどん虐めてください。そうすればうちの子は子供は鍛えられますって言っていたらしいよ。あとその団体への勧誘もしてきたみたい」
と加藤シャーロットがため息をついた。
「キチママ案件だこりゃ」千尋はため息をついた。
ひょっとすると村田って先生がおかしくなったのはこの衝撃体験が原因なんじゃ」結城はため息をついた。
 
 勝馬と都が乗ったバイクが国道349号線を南下していく。辺りは夕闇が迫っていた。
 そのバイクのミラーに一台の黒いRVが映り込んでいる。後方をゆっくりとつけてくる。
勝馬君。ちょっと横道に入ってくれるかな」
都は大声で言うと、勝馬は「おトイレですか」と聞いてきた。
「後ろの車につけられているのかもしれない」都は大声を出した。
 勝馬が横道に入ると、その車も追跡してきた。国道から田んぼに降りる乗用車は迂回した方が良さそうな道なのに、かなり無理して坂道を下り、田んぼのあぜ道を走る。
「へへへへ、面白れぇ。俺のバイクテクニックを見せてやるぜ」
勝馬が大喜びだが、都は「ううん、止まって」と声をあげた。
「え」
勝馬が怪訝な顔をしつつもバイクを田んぼのわだち道に停車すると、黒いRVも停車した。都はバイクをぴょんと降りるとヘルメットを勝馬に渡した。そしてRV車に向かって叫んだ。
「平信二さん。貴方は包囲されています。すぐに出てきてください」
車のドアが開いて、平信二が出てきた。じっと都と勝馬を見つめている。
「ふふふふ」都は笑った。
「やっぱり、尾行をするなら小学生になりきるのが一番ですね」
都はあわあわする勝馬を背中に言った。
「君も悪い子供だ。私の家に勝手に入って押し入れの中を見るなんて」
平が怖い顔で言う。勝馬はあわあわしながら背後から、都に心の中で具申した。
やはりこの男は見てはいけないものを見てしまった都さんを消すために‥‥。都さん、すっとぼけてください)
「ああ、血だらけの木刀とスーツケースですね」
都は平信二をまっすぐ見つめた。背後で勝馬が真っ白な笑顔になる。都は平をじっと見つめて、さらに事件の核心を話し出す。
「あの木刀についている大量の血液は、私が探していたイシマタクロウさんの血液。そしてあのスーツケースはイシマタクロウさんの死体を入れて運ぶためのもの」
平信二はぎろりと都を見つめるが、都は構わず真実を話す。
「そう、あの押し入れにあったスーツケースと木刀は、イシマタクロウさん殺害事件の証拠なのです」
都はゆっくりと話しだす。
「私は友達が巻き込まれた事件を調べていくうちに、その犯人を含めてイシマタクロウさんに出会った大勢の人間が、元々の性格から一転して悪い事や人を傷つける事をする残酷な人間に変わって、みんな逮捕されているという事実を知って、そしてイシマタクロウ殺害事件が存在した事を証明するためにこの村に来たんです。なぜイシマタクロウさんに出会った大勢が悪い人にみんななってしまうのか。平信二さんが殺人に使われた凶器とスーツケースをビニールにコーティングして持っていた理由は何なのか。今全てお話ししようと思います」
都は言った。
「車の中にいる、貴方に」
都に言われ、RV車の後部座席に乗っている人物がびくっと震えた。