少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

地獄ムーバー殺人事件❶

PRT殺人事件

 

1

 Ajman to boast of world's largest electric vehicle transport system -  Connected To India

 

 

「殺してやる。殺してやる」

黒い影は目を血走らせて笑った。

「今日がお前が恐怖と苦しみに許しを請う日だ」

 

「だぁああああ」

特急列車が向かい側に停車するターミナル駅。スクリーンドアの向こうに停車する快速通勤列車のドアから下車した結城竜はホームの熱気にため息をついた。

「全く大変だったぜ。わざわざ東京都心まで行って裁判の検察側証人として出なきゃいけないなんて。なんで高等裁判所は茨城にはないんだよ」

と文句を言いつつため息をつく結城。

「でも楽しかったよ。東京都庁に登ったり、雷門で人力車乗ったり‼」

と小柄なショートヘアJK島都は凄くうれしそうにぴょんぴょんしている。

「あと相棒で出てくる警察の偉い建物とか、政治家の偉い人がいる建物とか、あと天皇の偉い人が住んでいるお家とか」

都がそのバイタリティで結城を引きずり回して訪れた施設を指折り数えているのを後ろで見ながら、結城は高架ターミナルからマックやなんかあるフードコート前にある自動改札口を通ってペデストリアンデッキの広場に出る。目の前にはデカいショッピングモールのガラス張りのエントランス、高層ビルで構成されたビジネスセンター、そして新交通システムの駅があり、デッキでアクセスされている。

「そうだ。結城君。帰りにパフェ食べていこうよ」

都は巨大繁華街のショッピングモールのガラス張りのエントランスを指で指示した。

「金が飛ぶぞ」結城が呻いた。

「パフェなら東京都庁で食っちゃじゃないか。クソ高かったけど」

しかし都はフラフラモールの方へ歩いて行こうとする。

「おい」結城はAGTの駅に連れて行こうと両手足をバタバタさせ抵抗しようとするが、行き止まり式のAGTの駅改札の前で停車したシャトル電車のスクリーンドアからスレンダーで長髪黒髪の高野瑠奈がノースリーブにハーフジーンズでハンドバック姿で降りてきて、都と結城に遭遇してその美顔を驚かせる。

「あ、瑠奈ちん、おおおおい」

都が手を振る。瑠奈は目をぱちくりさせた。

「そっか。今日都は東京に行っていたんだ」

「瑠奈ちんはこれに乗りたかったんだよね」

都は笑顔でAGT駅自動発券機横のポスターをてしてしする。

「な、なんだこれ」

結城はポスターにかかれた変な乗り物を見つめた。「開通、ミニシャトル。茨城ターミナル循環運転‼」と書かれたポスターだ。

UFOみたいに空を飛ぶのか。それともタイムマシンか何かか」

「おおお、結城君は夢があるね」

都は結城の肩をタシタシするが、結城はぶっきらぼうに言った。

「言ってみただけだよ。都が楽しそうだから」

結城はジト目で都を振り返る。

「あれだろ。ゲームセンターかシネマコンプレックスとかのアトラクションだ。こいつに乗って立体映像を楽しむんだ。水しぶきとか振動とかを映像と連動させるタイプの」

それを見た都は目をぱちくりさせた。

「違うのか」結城はジト目のまま考え込んだ。

「わかった。あの」結城は薄暗くなった夜空にきらびやかに窓の電気とライトアップで光り輝く高層ビルを指さした。

「あのビルの屋上のアトラクションだ。最上階の屋上に設置されていて、客が乗るとしたから鉄の棒が出てきて、300メートルの高さから夜景が一望できるんだ」

「結城君て」

瑠奈はきょとんとした表情で言った。「結構発想が子供っぽいんだね」

その言葉にぎくっと衝撃を受ける結城。

「な、なんの乗り物」結城はポスターをしげしげと見つめた。

 

3人はショッピングモールに入り、その吹き抜けのエントランスの未来のデザインの中に立っていた。

「お、おい。シネコンとかゲームセンターとかはあっちだぞ」

結城がシネコンフロアの中に吸い込まれていく空中エスカレーターを見ながら先先急ぐ瑠奈に声を上げる。

「違うよ。乗り場はちょっとターミナル駅から離れていてモール棟の南側にあるの」

と瑠奈は落ち着いた笑顔で振り返った。アパレルやジュエリーフロア、結城にとってはまぶしすぎるエリアを通ると、マックやケンタッキーや吉野家のフードコートの向こう側に何やらガラス張りのスクリーンドアが見えた。のりばは3つあり、ポスターで見た乗り物が斜め停車できるような構造になっている。

「ぬっ。こんな屋内遊園地がいつの間に出来たのか」

結城は言った。「あれだろ、これに乗ったらハリーポッターとかスタジオ次ぶりのキャラクターが出てくるんだろ」

そんな結城に瑠奈はため息をつきながら「スタジアム駅」のボタンを押して呼び出し、そしてスマホを液晶に密着させて決済させる。

1400円か。でもこれカードとスマホ専用でキャッシュは出来ないんだろう」

「大丈夫だよ。同行者は無料で乗れるから」

瑠奈が笑うと結城は「つまり1人ワンコインか。って随分と太っ腹なアトラクションだな」と瑠奈に100円玉を渡す。

 その時だった。ロン毛のホストみたいな背広姿の青年、鷲尾ヒロシ(31)が「ちょっといいかな。社長が乗っているかもしれないから」と声をかけた。若い20歳くらいのパンツスーツの女性、岡あやの(22)が「私たち、社長を出迎えたいから」と頼む。

「え、でも今から来るのはあそこの駐車スペースから呼び出されるタイプですよ」

と瑠奈がきょとんとする。

ガラスに密着する都の向こうでコンクリートの空間の駐車スペースから自動であの乗り物が呼び出され、スクリーンドアの前に停止する。ドアが開いて、その小型車よりも小さくてデザインは未来っぽい乗り物に乗り込めるようになる。

「ほう、これはまた賢いなぁ」

結城は感心したように呻く。

「よーしよしよし」

なんだかそれが犬みたいに思えたのか、都がスクリーン越しになでなでしている。それを結城は「何やってるんだ」と呆れ、瑠奈は「早く乗らないとセンサーが同行者と認知してくれなくなるから」と突っ込んだ。瑠奈はドアの閉ボタンを押すと、日本語と英語、韓国語、中国語で注意アナウンスが流れ、車両は電気音をVVVF的に鳴らしながら、ゴムタイヤの静かな音とともにバックし、そのまま電磁誘導だろうかに誘導され、コンクリートループ線を走り出した。

そしてショッピングモールの背後にあるタワーマンションやビジネスタワーの別館の横を通り抜け、歓楽街の横丁を高架で通り抜ける。そして次の駅に入るが、シャトルは駅のスクリーンドアの停車スペース横を通り抜けた。

「あれ、これ快速運転もするのか。こんなちっちゃい交通システムなのに」

「ううん。これは個人運転システム、法律ではタクシーと同じ扱いなの」

と瑠奈。金持ちが住んでいるマンションを通り抜け、大通りを通って総合病院の敷地に入り、2つ目の停留所をさっきみたいに通過し、方向を変えて西に向かう。

「そういえばこの病院こんなところに移転して不便じゃねえかって思ったんだけど、こういうシステムが開通していたのか」

「うん、BRTの停留所と直結していたんだけど」瑠奈がガラス越しに見下ろした国道の大通りのBRT停留所と病院を繋ぐペデストリアンデッキを指さす。PRTはそのまま高架複線ゴムタイヤ軌道で低所得者が多く住む高層のURアパート街へと入り、両側の大通りにSEVEN-ELEVENマクドナルドの看板が立っている。

「あ、高校だ」

都は目をぱちくりさせた。都たちの通う高校の前にも停留所が出来ていた。そしてその1つ先の停留所が終点になっており、コンクリートの転回スペースの向こうにある停車スペースにシャトルは入り込み、ドアとスクリーンドアが開いた。その時目の前で髭を生やした男、ロドリゲス松本(36)とスタンコビッチ平間(38)という髭面の男が分厚い唇でキスをしあって絡み合っていた。結城、瑠奈、都がぽかんと見つめる。

「ぎゃぁああああああああああっ」

3人は絶叫を上げた。

「あらゴメンナサイ。まさか呼び出したムーバーに人が乗っているなんて思わなくて。刺激が強すぎたかしら」

とロドリゲスがムーバーの中でひっくり返って鼻血ぶーしている都を見つめた。

「お2人さん。俺は同性婚くらい認めるべきだと思うし、差別はダメだと思っている。だがな…ディープキスをここでやんな!!!!

結城がハァハァと息を上がらせながら突っ込むと「高校生には早かったのね」と乗り場の端っこによってキスを再開した。

「そういう意味じゃないんだがな」結城はため息をついて、停車しているムーバーを振り返る。都がバイバイしているのを横で見る結城。

「なるほどな、こりゃ便利だわ」

改札もなくそのままペデストリアンデッキに出る結城。大通りの交差点の高架を都を引きずって乗せようとしたAGTの車両が通り抜け、その周りには雑居ビルやコンベンションセンター、サッカースタジアムがある公園。さらに大きな未来デザインの教会広場があった。

「信号も渋滞も関係ないし、目的地まで途中の停留所にも止まらないで直通してくれるんだもんな」

「でもボッチには厳しいわんこだよね」

と都が目をぱちくりさせる。

「だって1人で乗ると400円もするんでしょ。私AGT2駅くらいなら我慢して歩くのに」

都は「わんこ…」と突っ込む結城の横でマックやセブンイレブン、クリニック、ネットカフェの入った複合ビルの横を通り抜ける4両編成の新交通システムAGTを見つめた。

「あ、でもインターネットで会員登録すると1か月3000円、1年間3万円で乗り放題だよ」

「安‼」結城が素っ頓狂な声を上げた。

「これ沿線住民なら絶対使うだろ」

「あ、あのー」

と背後で声が聞こえた。振り返ると中学生くらいのFCサッカーチームのサポーターCAPを被った女の子が声をかけてきた。

PRTの停留所ってここですよね」

「あのペデストリアンデッキの向かい側のガラス張りの建物です」

瑠奈は青くライトアップされた乗り場を見つめた。

「社長」少女は同じくサポーター衣装の眼鏡の糸目中年男性播磨博英(35)の所に戻った。

「やっぱりあっちみたいです。早く乗車しましょう」

少女高砂みやび(13)が促すと、

「そうだな。早くターミナルのマンションに戻りたい。もうすぐ激混みするだろうから」

糸目の長身の男性が上機嫌に頷いた。かなり酒を飲んで出来上がっている。

「何分に一本来るのかしら」と眼鏡にサポーター衣装の女性城比美子(33)が眼鏡を持ち上げる。

「確かボタン一つで呼び出せるシステムですよ」

若手と言った雰囲気の青年、川越俊太(25)が頷く。

「あれ、モールの乗り場の人たちが待っていた社長かな」

と瑠奈が目をぱちくりさせた。

「だとしたら凄いお金持ちの社長さんだよね。だってスタジアムではVIPルームの人を先に帰らせるようになっているから」

「って事はわんさかこれから人が来るって事か」

結城は腕時計を見た。そしてPRT乗り場を見る。スクリーンドアの向こうで社長をムーバーの座席に座らせる中学生の少女。そして絡み合っているロドリゲスとスタンコビッチの横で社長がムーバーに乗り込み、ドアが閉まるとCAPの少女と社員2人が一礼して見送るのが見えた。

 まさかこの時見た光景が不可思議な事件の前兆となるとは、この場所にいた全員の誰もが気が付かなかったのである。

 

2

 

「さっきの社長さん、何の会社の社長だったんだろうな」

マクドナルドの2階席からサポーターがペデストリアンデッキカーネルサンダースの人形を胴上げしているのを見ながら結城は声を上げた。

「芸能プロダクションとかかな」

瑠奈がポテトを口にしながら言う。

「中学生くらいの女の子が社長って言っていたからか」

結城はため息をついた。

「うん、だってあの年齢の女の子に社長って言われるのは芸能プロの社長さんしか思い浮かばないよ」

と瑠奈。

「まぁ、15歳以下の人間は児童労働禁止だもんな。秋菜くらいのローティーンで社長と呼ぶくらいの仕事上の付き合いが出来るのって、子役とかくらいで、そうなると芸能プロくらいか。あ、でも社長と従業員が家族みたいな関係で、それで休日も一緒にスポーツ観戦をしているとか、そういう可能性もあるぜ」

「うーん。それはないと思うな」

都はメロンソーダをちゅーしながら言った。

「あれを見てよ」と都が指さす方向。窓の下でサポーターの中で騒いでいるのは一部だけで、大半のサポーターはお通夜モードでAGTPRTの駅にとぼとぼ歩いている。

「ありゃー、ホーム2連敗か」

結城は頭を掻いた。

「あ、そういえばあの社長たちのコスプレ、アウェイチームだったね」と瑠奈。

「それに今日のアウェイチームって300㎞離れた都市が本拠地だよ。会社の人が全員アウェイチームのファンって事はないんじゃないかな」

と都。

「つまりワンマン社長の趣味に休日も付き合わされていると」

結城はため息をつく。

「そんな仲良しな人たちには見えなかったんだよね。だってわざわざ社長が降りる停留所の乗り場で待っているなんて、変だよ」

と都は考え込んだ。

「それに私ちょっと気になったのは、多分一緒にいた人たち、あの女の子のお父さんとお母さんじゃないと思うんだよね」

「どうしてそう思うんだ」

と結城。

「だって、酔っぱらった社長の介助を従業員の大人がやるんじゃなくて、その娘さんがやっているのって普通はないよね」

「って事はやっぱり芸能プロって事だよね」

と瑠奈が少しうれしそうに言った。

「あの子きっと有名子役なのよ。だからファンとかが気が付いて騒いだりしないように、VIPルームのスタジアムで見ていた」

「でもそれならなおさらあの子が私たちに声をかけるってのは変なんじゃないかな」

と都が目をくりっとさせて瑠奈と結城を見る。

「だって私たちすっごい可愛い女の子2人と結城君だよ。私たちなら子役の子とか知っているかもしれないって向こうも思って、大人の誰かが私たちに聞きに行くんじゃないかな」

「あ、確かに」

と瑠奈。

「じゃぁ都は何だと思っているんだよ」

と結城は訝し気な表情をする。都は腕組して「うーん」と考えて指を立てて得意げに言った。

「あの子は人間に化けられる宇宙人で、周りの大人はそのテクノロジーを売って儲けている会社」

「へ」結城と瑠奈が目を点にする。

「そんでもって会社はあの子と秘密の取引をしたんだよ。それは宇宙のテクノロジーを会社に供給する代わりに、会社はあの子が宇宙に帰るUFOを修理するための機材を提供する。多分どこかのビルのハッチが開いて、UFOが飛んでいくんだよ」

都が真剣な表情で結城と瑠奈に顔を近づける。

「ハイシティホテルなんかどう」と瑠奈。

「屋上に高さ100メートルのオーシャンプールがあるんだけど、それが開いて発信するってのは?

「あんな場所にUFO収納区画があるとして、あのホテルのIRのカジノはどこに行くんだ。あそこでチップを数えるバイトを俺してたんだが」

と結城が呆れて言う。

UFOは四次元空間に収容されているんだよ」

都はじーっと結城と瑠奈を見て言った。

「お、お前女子高校生探偵だよな」結城はウルウル涙を流してあきれ果てた。

「俺知っているぞ。お前が多くの不可能犯罪トリックを暴いていた事を」

そんな結城を都は「でへへへ」と笑いながら見た。

「結城君、都ってこんなもんだよ」と瑠奈が結城を覗き込む。

PRTの駅の前で通り過ぎただけで『これは違う』って可能性を否定できるだけでもすごいよ。でも何か結論を導き出す必要がある場合、都は情報を手に入れるために走り回っている」

瑠奈はハンバーガーを幸せそうにハムハムする都を見つめた。

 

PRT駅のスクリーンドアが光るのりば。

「それじゃぁ、みやびちゃん、私たちは帰るわね」城比美子が言うと高砂みやびは「お疲れさまでした」と笑顔で言って、後続のムーバーに乗り込んだ。

 

 マクドナルドテーブル席で瑠奈は都を見ながら言った。

「よくインターネットでいるじゃん。女の子が被害に遭う事件で母親が犯人に違いないとか、無責任な事を言う人。でもそういう無責任な推理をしてそれをネットとかで広める人の情報って結局今都が手に入れられた情報程度のものしかなくてさ」

 

瑠奈が喋っている間、一人播磨社長を載せて都市のビルの間の高架を走っていた。ムーバーの車内で播磨社長は目を見開き、苦しみながら血をごぼっと吐いた。

「助けてくれぇ、助けてくれぇ…助けてぇ…」

それを天井の監視カメラはじっと見ていた。

 

瑠奈は幸せそうにハンバーガーをパクパクする都を見つめる。

「これくらいの情報で都は人を追い詰める推理なんて絶対しない。今の段階だと物凄い陰謀が背景にあるのか、それともどうでもいい笑っちゃうような理由なのか、それはわからない。でも何々なのは違うと思う…ってのと何々に違いない…ってのは、必要とする情報も責任も全然違うんだよね」

瑠奈は結城に笑った。

「それを都はずっとやってきたんだよ」

「結城君、瑠奈ちん」都が笑顔で言った。「アイスも食べていい?

「駄目」

2人は一斉に答える。

「えー」都がじーっと瑠奈と結城を見つめる。

「そういう顔をしてもダメ!」と瑠奈はぴしゃりと言った。

「貴方たち」

突然婦警2人がマックの店の中で声をかけてきた。

「もう1030分よ。11時以降の未成年者の出歩きは補導の対象になるから、早く帰りなさい。この子は小学生でしょう」

と婦警A。都は「結城君小学生だって。確かにかわいいけど、背は高すぎない?」と都が笑顔で結城の頭をなでる。

「どう見てもお前だろ小学生は‼」と結城が突っ込む。

「この子、高校生ですよ」と瑠奈が言うが、婦警は「高校生でもよ」と言った。

「この辺は昨日不審者が出たんだから」

「不審者ぁ?」結城が訝し気に言った。

「そいつがたいが良くてハゲで俺は北谷勝馬、世界一だとか喚いていましたか。それともBLBLってよだれ垂らしてふらついているJKでしたか」

「誰の事。もっと危ないクリーチャーよ」と先輩婦警。

「この前PRT駅で斧を持って白いゴムマスクを着用した不審者が監視カメラに映っていたわ。そのカメラはその不審者によって斧で破壊されちゃったけど」

「こわっ」と瑠奈が目をぱちくりさせる。

「悪質な悪戯だと思うけど、万が一って事もあるから、未成年者は早く帰りなさい。この街区のセブンやファミマにも24時間営業は自粛するように警察が求めているから」

婦警はそう言って店を出て行った。

「私の推理の可能性がますます高まったね」

都が結城にわくわくした顔を見せる。

「悪の宇宙人が現れたんだよ。そして宇宙人の女の子が隠れている秘密のアジトを探しているんだよ」

「寝言を言ってないで帰るぞ。明日絶対に学校に遅刻するなよ」

結城は都の首根っこ掴んでお持ち帰りモードに入った。

 

 ターミナル駅のショッピングモール。PRTのターミナルモール駅で鷲尾ヒロシと岡あやのが不安そうに待っていた。

「帰りのサポーターでごった返す時間なんだがな。早くしないとPRTも大混雑だぞ」

と不安げに腕時計を見る鷲尾ヒロシ。その時一台のムーバーがスクリーンドアの前に停車した。

 慌てて鷲尾と岡が頭を下げてムーバーを出迎える。スクリーンドアが開く。するとムーバーの車内でマッチョな男2人が抱き合い絡み合っていた。そしてようやく呆然としている鷲尾と岡を見て「いやーん」と恥ずかしがって見せる2人。鷲尾が

「何をやっているんだ。こんなところで。気持ち悪いんだよガチホモ野郎。治療を受けろ変態」

と激怒すると、マッチョなロドリゲス松本とスタンコビッチ平間が「あんだテメェ」「かわいがられたいの私たちに」とマッチョで大柄な体に迫って来たので鷲尾は「いいえ」と後ずさった。

「鷲尾さん」と岡が慌てて言った。もう一台ムーバーがスクリーンドアの前に停車したのだ。鷲尾は慌てて頭を下げる。ドアが開いて中に社長が座っているのが見える。

「しゃ、社長…」

岡あやのが恐る恐る顔を上げると播磨社長はムーバーの座席にぐったりと座り込んでいた。

「しゃ、社長…ターミナルモールに到着しました」

と鷲尾が恐る恐る播磨社長を揺する。すると播磨社長はごろりと床に崩れ落ちた。糸目だったはずの目を見開き血走らせ、苦悶に絶命した播磨の眼鏡の顔がそこにあった。その胸からは大量に出血している。

 すると別のスクリーンドアにムーバーが到着し、そこから降りてきた高砂みやびが口元を押さえて体を震わせ、岡あやのの後ろで絶叫した。