少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

少女探偵島都episode2

エピソードワン(②)
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【容疑者】
・諸橋優一(32):愛宕小学校教諭
佐久間銀次(55):愛宕小学校教諭
・広川然子(35):給食センター職員
・角田真喜男(58):愛宕小学校校長
・緑山ゆり(23):愛宕小学校教諭。
・田中一平(24):愛宕小学校教諭
・国山道子(49):愛宕小学校教頭
・棚倉利江子(33):パート従業員
・与野啓太(35):警備員
 
3
 
 音楽室にあったのは頭を勝ち割られて教壇の上に足を投げ出してこっちに無残な死に顔を向けている佐久間銀次の死体だった。
「うわぁあああっ」
結城が警備員の前で大声でわめく。
「どうした」
勝馬が結城の横に立って「ひぃえええええええええええええええええ」と悲鳴をあげて結城にしがみついた。
「結城君! 待ってよーーーーー」
都が胸を押さえてふらつきながら階段を登ってくるのを見て、結城は
「来るな!」と喚いた。
「絶対来るんじゃない」
結城はため息をついた。
 
都、結城、里奈、瑠奈、勝馬の5人は教室で待機させられる事になった。
「あー、母ちゃんのシチュー食べたいなー」
勝馬はため息をついた。
「すごい、パトカーがいっぱい」
都は校庭に光り輝くパトランプを見て感嘆の声を上げた。まさに大雨とあっていい感じの構図になっている。
「今鑑識の人が上がっていったぜ」
勝馬もすごく興奮していた。
「そんな事どうでもいいよ!」
瑠奈が突然大声で喚いた。温厚な彼女が声を震わせたので勝馬が口をあんぐり黙る。
「先生が殺されちゃったんだよ。そして誰か私の知っている人が犯人かも知れないんだよ」
瑠奈は声を震わせてガタガタ震えている。その時、扉が開いた。
「お前たち、刑事さんが話を聞きたいそうだ」
無表情の諸橋が冷徹な声でそう言ってから、廊下に引っ込んだ。
「どうもどうも」
変わって笑顔で入ってきたのは長身でスラリとした体をパンツスーツでバッチリ決めた大人のお姉さんだった。
「えええっ」
想像していた刑事と違うその凛とした姿に勝馬は口をあんぐり開ける。だが次の瞬間、もっと凄いことが起こった。
「お、結城君じゃないか。君はかなりの割合で事件に巻き込まれるねぇ」人懐っこく結城に駆け寄る刑事。
「なんだ、あんたか」
結城は嬉しくもないといった表情でそっぽを向いた。
「知り合いなんですか?」
瑠奈が聞くと、女刑事は「まぁね。この子はこの前駅前の銀行で発生した拳銃強盗事件で世話になったのよ。この子かなりの名探偵よ」と笑った。
「名探偵!」
都が目をキラキラさせる。
「ええ、あの銀行強盗事件では犯人はカタコトの日本語で話していたんだけど、結城君はこう証言したの」
 
ゆうぎん銀行の現場で結城は椅子に座りながら、ジト目で推理をした。
「あの銀行強盗、『カネカネ、カネ出セ』って外国人ぽく見せてたけどな支店長が『鍵を持ってくる』というと即座にその場にいた女性を人質にして金を持ってくるように促していた。それにカラーボール対策のために女性を人質に逃げる直前まで出入り口を塞ぎ、さらに後ろの行員の非常ボタンの動きまで気にしていた・・・。相当ゆうぎん銀行の強盗対策を知っている人間の仕業だ」
 
「で、逮捕してみれば彼の言うとおりこの銀行の元行員だったってわけよ」
長川はジト目の結城の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「ほええええ、結城君完全に名探偵じゃん。すごいすごい」都がぴょんぴょん飛び跳ねる。
「ち」結城は顔を赤くしながらすっぽを向いた。
「で、長川警部補・・・。佐久間先生の死亡推定時刻は」
「出血が多すぎるから何とも言えないが、発見時から大体30分から2時間前。ただし被害者はどうも直前に何か激しい運動をしていたらしくって思ったよりちゃんと割り出せなかった。ただしあの先生は放課後PCクラブの顧問をしていてな。その児童によればこの教師はクラブが終わる4時までは視聴覚室には確実に居たらしい」
「里奈が下校放送するまではあいつは生きていたって事か?」
結城は目を上げた。
「ああ、それで持って、その時間佐久間先生以外の教諭は全て職員室にいたしアリバイは完璧だ。給食のおばちゃんの広川さんも子供たち数人と同僚と一緒にいたからアリバイがある」
「そう言えば警部補さん」
瑠奈が緊張したような声を上げた。
「棚倉さんって私のクラスの子のお母さんが、4時くらいに学校の裏口から走って出てくるのを見ました」
「本当かい」
長川警部補は警察手帳を片手に身を乗り出した。「それはいつ」
「4時30分くらいだったかな。ちょうど里奈が仕事を終えて玄関で待っていた私たち・・・見ました。私たちは里奈が放送してから佐久間先生の死体が見つかるまでずっと昇降口にいました。怪しい人は出入りしていません。だよね。結城君」
瑠奈に力強く言われ、結城は「お、おう」と声を上げた。
「って事は俺は犯人じゃねえってことだよな」
勝馬がビビってみんなを見回した。
「はい、勝馬君、結城君、私、都さんは昇降口に4時から4時30分までずっといました」
瑠奈が真剣な顔で証言した。
「わ、私はアリバイない・・・」里奈が泣き出しそうな顔をした。
「里奈ちゃんは人を殺せる人じゃねえぞ」勝馬が証言して瑠奈も頷いた。
「小学生がそんな心配しなくていいよ。犯人は正面から金属バッドでボコボコにしている。そうとう体力があるやつだ。間違いなく大人だろうな・・・・ありがとう、君たちは帰っていいよ。ご両親にも電話したから」
「あ、俺両親がいないんです」結城が手を挙げた。
「オヤジは死んじゃって母親は精神病院で」
「あ、私も迎えに来れない。お母さんがお仕事で夜まで帰ってこないの」
都は目をぱちくりさせた。
「わかった。パトカーで送らせる」
「やったーーーーー」
都は大はしゃぎだった。その横で里奈が震えている。結城はそれに気がついて気にしていた。
 
「おおおお、これが結城君のマンション」
パトカーを降りた都は結城と一緒にそこそこレベルの高いデザインのマンションの玄関に立った。
「なんでお前がついてくるんだよ」
「だって、結城君の部屋みたいんだもーん」
都の周りをお花が泳いでいる。
「ちぇ、風邪引く前にとっとと来いや」
 
「ほら」
結城にカレーを差し出されて都はうれしそうに「いただきまーす」と広いリビングのコタツに入りながら声を上げた。そしてガツガツ食べてからおかわりーと満面の笑み。
はえぇよ」
結城はため息をついてからやれやれとカレーを入れてくる。
「はぁ、今日はすごくいろいろあったよぉ。転校して、殺人事件があって、結城君の家に遊びに来て」
「確かにな」
結城はカレーを盛り付けながらため息をついた。
「いろいろありすぎて正直体の震えが止まらん」
「見たくないものを見ちゃったからだよね」都は心配そうに言うと、結城は頷いた。
「都・・・お前は事件をどう思う」
結城が聞くと、都は「ほぇ」という顔をした。
「警察は俺らや先生たちにアリバイがあると言っているが、俺は何かアリバイトリックがあるんじゃないかと思っている。だがそのトリックがわからないんだよ」
結城はカレーを都の前に起きながら頭をポリポリ掻いた。
「大丈夫だよ、結城君、私は名探偵の助手だから、一緒に考えよう」
都は真剣な表情で言った。
「そうか、それじゃぁ第一の事件のアリバイトリックだが・・・」
「結城君、アリバイってなぁに」
都が「ほえ」と首をかしげた。
「アリバイも知らんのか。都、お前コナンとかも見てないのか?」
「あ、探偵アニメなら見てるよ」
都は立ち上がってランドセルから折りたたみ式のステッキを取り出した。
「魔法探偵少女ミライ! 私の人生のバイブルだよーーーー」
それを見て結城は頭を抱えた。
「ちぇ、女の子にとって探偵はそっちなのか・・・。それじゃぁ、あれか・・・・愛の正義のチカラで最後は魂を浄化すのか」
「うん」
都はうれしそうに頷いた。結城はさらに沈んだ。
 
「第一の殺人のアリバイは完璧だ」
黒い影は金属バッドを手にしながら笑った。
「第二の事件は・・・・」
 
「ち、警察のせいで帰る時間が遅くなっちまった」
諸橋は赤い自家用車の鍵をキーボタンで開けながらため息をついた。その時ミラーに人影が写った。
「何か」
諸橋が不機嫌そうにドアに手をかけて振り返った直後、突然その顔面に金属バッドがクリーンヒットし、メガネが吹っ飛んだ。駐車場に倒れ込んだ諸橋は血だらけでひしゃげた鼻から血をドバドバと流し、歯が折れた口で
「ま、まさか・・・佐久間もお前が・・・・・」
襲撃者は無言で金属バッドを振り上げた。
「や、やめてくれ・・・」
諸橋が悲鳴を上げようとしたが、その前に彼の頭はその人格ごとバッドに砕かれた。
 
「遅いなぁ、諸橋の奴」
翌日学校の教室で勝馬が両手を後ろに伸ばしながら声を上げると、ドアが開いて緑山ゆり先生が沈痛な面持ちで発言した。
「みんな・・・席に座って・・・諸橋先生が・・・亡くなりました」
教室はざわめいた。
 
4
 
「長川警部補」
結城は現場となった駐車場に走ってきた。鑑識が歩き回ってて、人型が駐車場に書かれている。人型の頭の部分には血の跡が広がっていた。
「おう、結城君。今全校集会だろう」
「校長先生が命の大切さの話をするだけだ。諸橋が殺されたのって本当か」
「ああ」
長川は規制線の外まで出てきて言った。
「死亡推定時刻は昨夜の18時から19時、第一発見者は前と同じ与野警備員・・・。死因はやはり金属バッドだ。おそらく同一人物だろう」
(つまり殺害時間は俺が都とカレー食っていた時間)
結城は思案する。
「ねぇ、長川警部補・・・・ア・リ・バ・イはどうなの」
と都。
「ア・リ・バ・イ?」長川は都の方を見てきょとんとした。
「今回の事件では教職員たちには誰もアリバイがなかった。ああ、一人アリバイがある人がいたな」
「誰」結城が聞く。
「棚倉利江子だよ。君らが目撃した棚倉って子のお母さん。あれから任意で引っ張って警察署で話を聞いていたが、その間に第二の殺人が起こってな、彼女は嫌疑なしで返したよ」
「でもおばちゃんはなんで学校に来たんだろう。忘れ物でも届けに来たのかな」
都が結城の背中に飛びつきながら背中越しに長川に聞いた。
「そりゃねえよ」
結城はため息をついた。
「棚倉春奈・・・あいつは俺らのクラスメイトだが自殺未遂をしちまったんだ」
「自殺未遂?」都がびっくりした結城の首を絞める。
「車に飛び込んだらしい。今入院しているよ。意識は戻っているらしいが呼びかけても反応しないらしい」結城は沈んだ声で言った。
「棚倉のお母さんがこの学校に来たのも、担任だった諸橋を追い詰めるつもりだったらしい。あの教師がいじめを誘発したんじゃないかって盗聴器を仕掛けて、それを回収していたそうだ。実際盗聴器も押収したよ」
長川警部補はため息をついた。
「あいつ、棚倉のおばさんの目の前で春奈の事をクズ呼ばわりしていたからな・・・。だが、おかしい話があるんだ。少なくとも春奈が自殺するようないじめは5年の時はなかった。だから俺はセンコーと何かあったんじゃないかと思ってたんだよ」
「問題ありすぎだろ、この学校」
長川は突っ込んだ。
「それともう一つ気になることがあるんだ」
「なんだ」長川が結城に聞く。
「なんでお前がここにいるんだよ」結城が都に突っ込んで、都が「ぴゃーーーーー」と声を上げる。
「お前もだよ!」
長川は都と結城を現場から押し出した。
「これは警察の仕事だ。少年探偵団は帰った帰った」
「なんで少年探偵団なんだよ」
結城は自分と都を見比べた。そして「はぁ」と大きくため息をついた。
「どうしたの?」都が目をぱちくりさせる。
「いや、棚倉のお母さんが犯人じゃなくて良かったと思ったんだ」
「ゆーーーきーーくーーーん」「みーーーーやーーーこーーーーーー」
地獄から聴こえてくるような憎しみの声。結城と都が振り返ると、黒髪ロングを逆立てて怒りのオーラの瑠奈がいた。
「どーこーへーいってたのーーーーーー」
「ぴえええええええええええええ」
都が恐怖に絶叫した。
 
「全く・・・全校集会ほっぽり出すなんて」
瑠奈は教室で結城と都にガミガミ説教をしていた。
「いいじゃねえか。全校集会には他に何百人と子供がいるんだ。一人くらい消えたって」
「冗談じゃないよ。クラス今日は11人も休んでるんだから」
「11人? 殺人事件が発生したからだろう」
結城はため息をついた。
「俺が親だったら子供を殺人犯が捕まらない学校に通わせたくねぇよ」
「でもおかしいんだよ」
足立君が言った。
「PCクラブ全員が休んでるんだよ。2組だけじゃなくて6年も5年も」
「え」結城が声を上げた。
「お前はPC倶楽部じゃないんだろ。なんで知ってるんだ」
結城が足立君に聞く。
「僕もPC倶楽部に入りたかったのに、佐久間先生がダメって言ったんだ」
足立君は消え入る声で聞いた。
「男の子はダメって理由でもあるのかな。クラブの子はみんな女の子だったし」
結城はPC室の無表情の女の子たちを思い出した。そして何かが氷解した。(そうか、そうだったんだ!)
 そして教室から走り出した。
 
 結城は階段の横で足を止めていた。
「クソッ」
彼の足は震えていた。
「なんでこんな時に・・・・」
階段で震えている結城の背後から黒い影が近づいて、いきなり彼にスタンガンを押し当てた。
 結城の頭に火花が走り、目の前が真っ暗になった。崩れ落ちる結城の背後に黒い影が立っている。
「トリックに気がついたか。第一の事件のトリックに」
殺人者は冷徹な目で結城を見下ろした。
「やはりこいつには・・・死んでもらう必要がありそうだ」
 
「今度は結城君を探す羽目になるなんて」
瑠奈はため息をつきながら都に言った。
 都は何か考えていた。
「結城君は、PCクラブの子が全員女の子だって足立君に聞いて、あとPCクラブの子が今日全員休んでいることに気がついたんだよね」
「うん」瑠奈が頷く。
「ねぇ・・・先生たちに全員にアリバイがあるのってさ、PC倶楽部の子たちが佐久間先生は4時までは部屋にいたって言ったからだよね」
「うん」
瑠奈が声を上げた。
「あれが嘘だったら?」
「都・・・・」
「私、長川警部補に知らせてくる!」
都は駐車場に走り出した。
 
「なんだって・・・」
長川警部補は校長室の前で声を上げた。
「うん」
都は苦しげに胸を押さえながら言った。
「PCクラブの子が今日全員休んでいることに・・・結城君気がついて・・・そのままいなくなっちゃって」
都は長川を真剣な目で見上げた。
「お願い、結城君を助けて!」
「わかった!」
長川は頷き、制服警官に命じた。
「すぐに学校を大捜索しろ!」
 
(つづく)