少女探偵島都 2018年

2009年くらいから母親が書いていたシリーズ設定をもったいないので2018年より本格的にわいが引き継いでみました。大体1記事でアニメ1話分くらいの長さだと思ってください。コナンや金田一みたいな高校生探偵ミステリーを想定しています。

暗黒空間殺人事件 解決編 4

暗黒空間殺人事件(解決編)
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【容疑者】
・佐野浩史(16)常総高校1年
・田口葉空(15)常総高校1年
・宮崎咲良(15)常総高校1年
・菅城澪梨(15)時和高校1年
・佐藤瞳(16)キャンプ場高校生ガイド
渡辺康幸(52)渡辺アミューズメント社長
・東山明華(24)愛人
松崎勘太郎(28)従業員
岸下保(28)従業員
・小山寛郎(26)犬ちんこ
 
7
 
「な、なんであなたがここに!」
その人物=島都に対して東山明華が喚いた直後、背後から結城竜が腕力に物を言わせて明華の手から斧を奪い取った。長川朋美が部屋の用具入れの影から飛び出し、明華を包囲し、金が入ったバッグを奪い取る。廊下には田口葉空、と佐藤瞳そして犬ちんこと呼んでいた小山寛郎が立っている。
「どうしたのかしら・・・」
東山明華は不敵な表情に戻った。
「私は社長の愛人よ。このお金をどうしようと私の勝手じゃない・・・。それにこの斧は作業の為に持ち込んだのよ。何か文句があるの?」
「この斧でここに閉じ込められていた人たちの鎖を断ち切って、お金を持たせて自由にさせる・・・これがあなたの計画の最終目的だったんだよね」
都は哀れむような表情で言ったが、明華は「どうして私がこんな動物以下の存在のためにここまでしなきゃいけないのよ」と吐き捨てた。
「それはあなたが、田口優さんの恋人で・・・彼の復讐の為に3人を殺害した犯人だからだよ!」
都はまっすぐ東山明華を睨みつけた。
「ふざけんな・・・・なんでこいつが兄さんを虐待していたこいつが・・・・」田口が激怒して都に掴みかかろうとするのを結城が阻止した。
「そうよ・・・なんで私が犯人?」はっと笑い捨てるように東山は醜悪な顔で笑いながら言った。
「私には第一の事件で渡辺社長が殺された事件、第二の事件で岸下が殺された事件ではアリバイがあるわ。結城君、第一の事件では貴方といっしょだったし、第二の事件では私がいる休憩室と殺害現場への唯一の通路には結城君と勝馬君がいた。第二の事件で私が壁抜けでもできない限り・・・・」
「確かに人間の壁抜けは不可能だよ・・・。でも、銃弾の壁抜けは可能だよ!」
都は言った。
「第二の事件で岸下さんが殺された事件。死体の状況から彼は正面から撃たれている。でもあの通路の状況から彼を銃で撃つとすると、狭くて銃が壁にぶつかっちゃう。拳銃で撃つとしても、彼の正面に狭い通路でわざわざ回り込んで正面に立つ必要はない・・・。そう思ったとき、私は思ったんだよ。実はこの殺人現場には私たちの知らない異次元があるんじゃないかって・・・。それに気がついたのはあなたが澪梨ちゃんに掴みかかった時の言葉・・・。確かあなたは澪梨ちゃんが岸下の銃を奪ったって言っていたよね。でもあなたが出てきたとき、銃を手にしていたのは田口君だった。だから私は気がついたんだよ。殺害現場には穴があったんじゃないかって・・・。あなたはその穴から、澪梨ちゃんが岸下からライフルを奪うのを目撃していた・・・。そしてその穴の向こうにある休憩室からあなたは猟銃をぶっぱなした。多分岸下さんを瑠奈ちゃんの名前であの場所に呼び出してね・・・」
「でも殺害現場に穴なんかあったか?」
田口が声を上げる。
「確かに、穴があればお前は気がついていたはずだ」
と結城も疑問を口にする。
「そう、私は穴を見つけることはできなかった。でも結城君と私が死体を見つけた直後、共犯である松崎が私と結城君を銃で追い立てた。その時松崎は壁と同じ色をした粘土で後ろ手に穴を塞いだんだよ!」
都は言った。
「炭鉱ではケーブル通すために小さな穴が壁に開けられることがあるみたいだよね。その穴の直径は7ミリくらい。ライフルの弾と同じくらいだよ。あなたは岸下が予定の場所に来ると壁の穴越しに瑠奈ちんの声色で話しかけたんだよ。そして岸下が壁越しに瑠奈ちんが話していると不思議がって穴に近づいた時に、穴越しにライフルで・・・。だから壁と岸下さんとの間に余裕がなかったんだよ」
「ちょっと待ってくれ・・・第二の事件で使われたライフルの線状痕は、あの時お前らが持っていた2つのライフルの線状痕と一致していない。つまり第三者の銃が存在したことになる。だがあの時洞窟には他に猟銃はなかった。彼女が犯人だとどの銃で・・・・」
と長川。都は「勿論、松崎のライフルだよ」と即答した。
「でも線状痕が」
「確かに普通に撃てば線状痕は同じになる。でもあの時は猟銃の先には壁のトンネルがあったんだよ。落盤しないように1メートルもある分厚い壁が・・・。その穴のデコボコがそのまま銃弾に残れば、同じ銃から撃ったとしても壁の穴の岩のデコボコが線状痕として残っちゃう。つまりあの時のライフルは同じ銃でも同じ銃ではなかった。壁の穴と一体化した殺人ライフルだったんだよ!」
「ちょっと待ちなさいよ・・・」
明華が都を睨みつける。
「第一の殺人はどうなるのよ・・・第一の殺人の時、私は結城君と一緒だったのよ。そうよね」
「ああ」明華に言われて結城は頷いた。
「おかしな女だったが、確かに俺と一緒だった」
「それは当たり前だよ」都は言った。「第一の殺人を犯したのは、松崎と岸下の共犯だったんだから・・・」
「だが松崎も岸下も殺されているんだぞ・・・」長川が声を上げる。
「この事件はとても複雑な事件なんだよ。まず最初にあなたは社長と岸下に殺意を持っていたあなたに話を持ちかけた。多分エッチと金庫の番号を知っていることを利用したんだと思う。明華は松崎に社長と岸下の交換殺人を持ちかけた。松崎が社長を殺害し、明華さんは岸下さんを殺害する・・・。ここでこのトリックの一番の味噌なんだけど、松崎さんは岸下さんに社長殺害を持ちかけたんだよ。つまり2人でグルになってアリバイを確保するっていう・・・。その上で拳銃で社長を殺害し、凶器の拳銃はバラバラに分解して海に捨てる・・・。そして第二の事件では今のトリックで存在しないライフルの架空の線状痕が出来て、それが松崎のアリバイにつながる・・・そう松崎にトリックを話して彼に殺人の片棒を担がせた。そして松崎が捕まったのを見計らって軽く二酸化炭素を炊いてみんなを気絶させ、松崎をナイフで・・・・」
「だから第三の事件だけナイフだったのか。架空のライフルはもう使えないから・・・・」
結城は感心したように言った。
「明華さんは松崎を利用し、松崎は岸下を利用して殺したのね」と瞳。
「その二重構造も、第一の事件や第二の事件の簡単なトリックを私たちに発想させない事に役に立ったよ。あなたは第一の事件で敢えて私たちに松崎と岸下が共犯で社長を殺した可能性を考えさせた。でもそれを打ち消すような事件が次々と起こる・・・岸下が殺され、岸下殺しのあなたたちの物理的アリバイが証明され、事件を見返してみれば、第一の事件の松崎・岸下の共犯の可能性は全くなくなった。私も本当に殺人犯が暗闇の奥に別にいるんじゃないかって思ったんだよ。交換殺人や共犯殺人という簡単な構図だけで見れば、この事件は不可思議な形に見える・・・でも二重交換殺人という方法で事件を見れば、自ずとこの事件の全容を見ることが出来るんだよ」
明華は上を見たままもう何も見ていなかった。彼女は目を閉じて黙って都の推理を聞いていた。
「だがあの穴はいずれ鑑識が見つけるだろう。いつかは我々もあの穴から狙撃された可能性にたどり着くはずだ・・・再度実験すれば証拠の線状痕だって出るだろう」
「別にそれでも構わなかったんだよ。明華さんは今日、ここで閉じ込められている小森さんと同じような境遇の人達を救って、社長のお金を渡して逃がしたあとで、誰もいなくなったこの場所で自殺するつもりだったんだから・・・」
「教えてくれないかな、どうして私の犯行の全容に気がついたのかな」明華は笑った・・・。その笑顔は屈託のない24歳の女性そのものだった。黒髪の清楚で温厚そうな顔を都に向けて、殺人者は敗北を認めた。
「一つは第一の事件で犬ちんこって言われていた小森さんを結城君の所に連れてきたこと。結城君をナンパするつもりなら小森さんを連れてくる必要はない。彼を連れてきたのは、疑われる可能性が高い彼に罪を着せないため」
「な・・・・」小森が驚きの声を上げる。
「小森さんを地上に残るように仕向けたのも、あなただよね。松崎も岸下も小森さんは殺していい存在って言っていたし・・・。彼が私たちを閉じ込めるのも想定内だった」
「信じられない・・・・」
小森は叫んだ。「この人たちは僕らに動物の真似をさせていた人間ですよ。こんな残虐な行為をさせられて・・・僕らがどれだけ辛かったか」
「小森さん・・・あなたですよね・・・ここにいた人を助けたのは・・・・。その為の時間が必要だったんですね」
都に言われて小森は頷いた。
「小森さん・・・それは圧倒的な力を持ったあの3人から・・・皆さんを助けるためわざとそうしたのだと思いますよ」
都は下を向いて苦しそうにしている明華を促した。
「田口君も小森さんもいますし・・・ちょっと海に出ましょうか」
 
8
 
 徒歩5分ほどの茨城北部の砂浜で、東山明華は語り始めた。
「小森さん・・・今までひどいことをして本当に申し訳ありません。でも本心からではなかったんです。私は母子家庭で母親が病気で、中学卒業後すぐこの町の会社に就職しました。でもここは本当に地獄でした。私は15歳で社長に強姦され、幹部にも取引先にも犯されました。だれも助けてくれず、社会人として女として私は責められました。犯されるたびに私は怖くて泣き叫びました。自分が自分じゃなくなっていくのが怖くて、体を切り刻みたい衝動にかられました・・・。私は自分の精神を守るために、『私はエッチな淫乱娘で、社長の愛人』だと思い込むことにしました。職場の人間、取引先の人間に求められるままに応じました。私はセックスが大好きな人間・・・お金が欲しくてベッドで社長に取り入るような人間・・・。そう思い込むしか自分を守るしかありませんでした」
明華は小さく悲しげに海の方を見て喋っていた。
「そんな私に優しくしてくれたのが、社会人になる直前の田口優君でした。バス停で泣いていた私を家まで連れてきてくれたんです。私は当たり前に体目当てだろうと思い、彼の部屋でセックスしていいよと言ったのです。そしたら彼は泣いたんです。『僕は何もできない本当に底辺のダメなやつだけど・・・そんな人間じゃないんだよ』って・・・私は彼を傷つけちゃった・・・・」
明華は目に涙を浮かべながら都を見て笑った。
「彼はそれ以来私の話を聞いてくれました。私に会社を辞めるように言って・・・『明華さんは何も悪くない。もうこんな目に遭わなくてもいい』って・・・あの人は私をひとりの人間として扱ってくれたんです」
明華は耐え切れなくて涙を流した。
「私はその後NGOに助けてもらって教会の施設で働くようになりました。忙しくて彼には会えなくなったけど・・・。それでもいつか2人で幸せになりたいって思っていました。でも彼は渡辺の会社で・・・・」
「まさか、あの時警察署で泣いていた女性って・・・・あなた・・・・」田口が思い出したかのように戦慄した。
 
 警察署霊安室で暴行で腫れ上がった優の顔を見た明華は「な、なんで・・・・」と声を震わせた・・・。
「なんで・・・・なんで・・・・・なんでよぉおおおおおおおおおおおおお」
彼の遺体にすがりつき、明華は絶叫した。
 
「君のお母さんに日記を見せてもらったのよ」
砂浜の風に吹かれながら明華は田口に微笑みかけた。
「そこには私のPTSDを再発させないために、私に自分が受けている虐待のことを話せないってことが書かれていた。不器用な奴だったもん・・・。でも本当は助けを求めて欲しかったな・・・・。彼が暴力で殺されたのに警察は自分たちの保身のために無罪放免にした。それで気をよくしたあいつらは、君たち家族からも金を取ろうとしていた。彼が会社の金を横領したとか言って、大切な人が死んで動揺している家族に金をたかっていた・・・。そして彼女ってことになっていた私にも・・・。私は渡辺社長に無理やり会社に連れてこられて賠償を迫られたわ。私は敢えて乗ることにした・・・。あいつらが優君に何をしたのか探るためにね。私は最初は嫌がって泣き叫ぶ純情な女の子を・・・そのあとは社長のテクニックに目覚めた、エッチが大好きな獣のような悪女になりきったわ。性を売って男に取り入って金を手に入れ、弱いものいじめに精を出す外道になりきったわ。社長は田舎娘の私にレイプにレイプを重ねて淫乱女に仕込んだ・・・そういう作品として大事にしてくれたわ。自分の支配の象徴として・・・・。私はその立場の中であの会社の中の地獄のような状況を目のあたりをした。あいつらに正体を明かさないように、小森さんたちを動物呼ばわりし、人間としての尊厳を剥奪しました。でもあいつらに確実に法の裁きを受けさせるため、警察も黙認したあいつらが強大な力を持つこの地獄を終わらせるためだったの・・・。その為に私は、最も気持ち悪い存在になったわ。あの時のように、渡辺社長のレイプで仕込まれた淫乱女という作品になりきって・・・・・。楽しいなんて感情も嬉しいという感情も・・・ここ2年間全く感じなかった・・・優君と一緒にデートした時に綺麗だって思えたどんなに青い空や桜を見ても綺麗とも感じられず、美味しい料理を食べても味も感じられず・・・・感じているのは自分が汚れて狂っていくというダミのような感触だけ・・・」
だが次の瞬間、明華の顔が醜悪に歪んだ。般若のような怒りと絶望が入り混じった表情だった。
「そしてとうとうあの日、私はあいつらが夜に優の虐待を撮影したビデオの鑑賞会に参加した・・・。ビデオの中で私の大切な人が暴行を受けているのに・・・私はそのビデオを見ながら渡辺社長とセックスをして・・・笑ってた・・・私はその時、嬉しいどころか・・・悲しいという感情さえなくしていたのよ・・・・」
明華の目から涙が流れ出す。
 
「ふはははは、全く馬鹿な奴・・・本当にこれ死んで当然だわ」酒を飲んで満足感に浸る松崎。
「こんな奴ここで殺してあげたほうが幸せだよな・・・」と岸下。
「こんな奴を愛する奴の気がしれねぇぜ。なぁ、明華ちゃーん。そう思うだろ」
渡辺社長がそう言うなか、裸になって渡辺社長の上で喘ぎながら、明華は気持ちよさそうに言った。
「こんな奴の事なんて思い出したくない。私はセックスの方がいい。渡辺社長の性の奴隷になって・・・もっと・・・もっと・・・気持ちよくなりたい・・・・。私・・・H大好きィイイイイイイ」
 
「あの時の私は涙も出なかった。必死で渡辺社長に腰を振って気持ちよくならないとおかしくなっちゃいそうだった。でもその時私はアヘ顔になりながら決心した・・・・。こいつら殺してやるって・・・・。こいつらを殺さないと、優君の尊厳を取り戻すことはできない・・・。私を人間として救ってくれた優君がゴミみたいに扱われて、殺される様子を娯楽として使われ続けている・・・。そんなゴミどもに優君と同じ苦しみを味あわせてやるって! それしか優君の尊厳を取り戻す方法はないって!」
明華は血を吐くように砂浜に向かって叫んだ。
「それからしばらく経って、松崎が会社の金を横領したことがバレそうになって、社長を殺す事を考えている事を知ったわ。私は松崎と密かに関係を持って、松崎の若い体がいい・・・社長よりいいって言ってやったら、あいつはホイホイ社長の殺害計画を私に話したわ。あいつは田口君のキャンプ計画を島のオーナーから聞いていて、それを利用して最終的には田口君に罪をなすりつけようとしていた。でもあいつが計画を持ちかけてくれたせいで私の復讐計画に最後の一筆が加わったわ。あの腐った連中をまとめて暗い地下で、優君の苦しみを味あわせ、ゴミのように殺す計画をね」
体から湧き上がった憎しみのオーラがすーっと消えると、明華はため息をついた。
「でも・・・これで終わったわ・・・・。本当は優君の所に行きたかったけど・・・。でも、これで小森さんがあいつらに苦しめられることもない・・・。私も・・・・もうセックスはしなくていいのよね」
明華は長川警部にほほ笑みかけて、両手を差し出した。長川はため息をつきながら明華に手錠をかけた。
「明華・・・・さん・・・・」小森が声を震わせた。田口も呆然と彼女を見ている。
「なぁ、明華さん・・・」結城が聞いた。
「俺とセックスがしたいって絡んだのって」
「あなたが少し優君に似ていたのよ。だからきっと断るって思ってた」明華は笑った。
「イケメンなところとか?」
「いいえ・・・思いやりがあるところとかよ」
明華の優しげな笑顔に結城はため息をついた。
「なんだよ・・・。結局人殺しになって行く自分を助けて欲しかったんじゃないか・・・。言われなきゃわかんねぇよ」
「ごめんね」明華は静かに言った。「ありがとう・・・・」
それだけ言うと明華は絶句する田口と小森に見送られ、連行されていった。
「俺はなれなかったな」
夕日になりつつある海を見ながら、結城はため息をついた。「田口優って奴に・・・・」
「そんな事ないよ・・・」
結城の横に立って、都は優しく言った。
 
「ふわぁああああああああ」
結城は学校へ向かう利根川河川敷を歩いていた。横には都と瑠奈も大あくびする。
「ああーあ、殺人事件に巻き込まれた翌日は振替休日にしようぜ」結城がため息をつく。
「元気がないじゃん」
突然原付バイクに乗った藪原千尋が結城に横付けする。
「なんだぁ。お前は元気じゃないか」結城が唸ると、
「ふふふふふ、澪梨ちゃんと共同で殺人事件に巻き込まれた体験をコミックにしてそれが動画サイトで大好評・・・。是非書籍化も狙っているんだよね。ああ、結城君にも一冊進呈するよ・・・」
「どれ」
リュックから出された同人誌を一冊受け取った結城はページをペラペラめくった。
「まぁ、実際に起きた事件だから、不謹慎な描写はなくして・・・。結城君と勝馬君の穴の中での活躍を中心に」
「なぁ、藪原」結城が肩を震わせる。
「なんか洞窟とかは別の意味の穴が出てくるんだが」
横で瑠奈が「あれまーーー」と口に手をやって内容を見ている。
「まぁ、多少は腐女子の需要も狙って・・・アレンジはしてありますが・・・」
「ふざけるなぁああああ」結城がうがーーーと吠える。だが千尋は「感想は是非私と澪梨ちゃんの共同ピクシブ垢にぃいいい」と言って原付を発進させた。
「ねぇ、結城君ーーーーーーーー」都が追いかけた。
千尋ちゃんの本、どんな内容なのーーーー見せてよおおおおお」
「誰が見せるかぁあああああああ」
結城が走り出す中で、土手下を歩いていた勝馬が、「このやろう、おまえばっかり女の子とイチャイチャするなぁーーー」と喚いた。
 
おわり